2:名無しNIPPER[sage saga]
2025/05/16(金) 20:41:48.40 ID:LYl+0qW60
目が覚めたとき、体がしびれて思うように動かないのは明らかな寝不足のせいだった。
しかし今回は、いつにも増して記憶の混濁がひどい。こんなときは、たいてい数日間まともに眠らず、限界まで追い込まれて気絶するように眠りに落ちたあとだ。
先生は顔を枕に突っ伏し、背広を着たままだった。体の下に布団が敷かれているのを見ると、仕事の合間に仮眠を取ろうとベッドに倒れ込んだのだろう。メガネだけが辛うじてベッドの縁に置かれていた。
ゆっくりと体を起こし、重い腕を伸ばしてメガネを掴むと、それを鼻にかける。腰を下ろすように枕の上に座り込み、ぼんやりと頭を抱えながら、少しずつ状況を整理しようと試みた。
だが頭はうまく働かない。
ふと息をつきながら、先生は違和感に気づいた。いつもの、あの頭痛がないのだ。寝不足明けには決まって頭の中で鳴り響いているはずの、まるで解除できない目覚ましアラームのようなあの不快な響きが、今は不思議と消えている。
「…」
頬をつまんで引っ張ってみた。 痛みは、ない。 古典的な確認方法だが、これで確信した——ここは夢の中だ。
嗅ぎなれない香の匂いが鼻をついた。甘くやさしい木の香りで、まるで森の中にいるかのように、静かに心を落ち着かせてくれる。
シャーレの休憩室にこんなものを設えていただろうか。
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