9:名無しNIPPER
2025/07/31(木) 00:27:17.89 ID:DoK8Vme/0
時計の針すら聞こえない、永遠に近い沈黙。それを破るように、母親は頭を横に振った。ゴネリルとオールバニ公が同居したような表情であった。
「……それでも、娘をアイドルにすることは出来ません」
「お母さん!」
「来る時にこの会社を少し調べました。契約に関するトラブルを抱えているにも関わらず、資金不足により何も出来ていないようですね」
「……よくご存知ですね。もし今のままならまさにその通りです。ですが」
「ありすが入れば話は変わる、そう言いたいのでしょう。ですが経営としてはあまりに不健全です、1人に全てをかけるなど」
紛うことなき正論。実は反論の材料は無いわけではないのだが、言うことは出来ない。まだ一般に告知されていないラジオパーソナリティの仕事は口止めされている。
「話は以上です。アポも取らず押しかけてしまい、申し訳ありませんでした」
かつかつと去っていく夫妻と責め立てるような橘さんの顔を、俺はただ黙って見送ることしかできなかった。
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