28:1[sage]
2010/06/02(水) 18:04:09.05 ID:voI3GIoo
「まだちょっと休んでてね。もうすぐスープできるから」
エリアは空になったカップを受け取ると、足取り軽く炊事場に戻っていった。
スープ。その単語を聞いた途端、これまで身の内で潜んでいた空腹がダルクを襲った。
そういえば外界に到着して、まだ一度も食事らしい食事も摂ってない。
「なぁ。いま何時くらいなんだ?」
「もうお昼だよ」
「お昼!? ってて……」
もはや夜が過ぎていたことは、この部屋で目覚めた時から窓辺の光で分かっていた。
しかしせいぜい明朝ぐらいだろうとタカをくくっていた。すでに昼とは参った。
夜のうちにやりたかった作業がたくさんあったのに、全く初日からつまづいてしまったな……。
「そ、そうだ、ディーは!? アイツは明るいところ駄目なんだ!」
「大丈夫、ちゃんと暗がりで寝かせてあるよ。コウモリだもん、そのくらいの配慮はしてるよ」
「そ、そうか、よかった……ありがとな」
「どういたしまして」
嬉しそうな響きの返礼が炊事場から聞こえた。
ここにきて初めてダルクは思い至る。
何から何まで面倒をみてくれるこの少女。
言うまでもなく、自分とエリアはこれまでまったく面識のないアカの他人だ。
しかもケガの報いを受けたとはいえ、言い逃れできないノゾキの現行犯ときた。
そんな輩にベッドを貸し出し、治療を施し、使い魔の世話までみてくれて。
ここまで親切にしてもらうのは、いくらなんでも帳尻が合わないのではないか……。
やがてエリアがスープの乗った膳を運んできた。
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