29:1[sage]
2010/06/02(水) 18:05:56.33 ID:voI3GIoo
「おまたせ」
ベッドの脇に小テーブルが寄せられ、その上にコトンと配膳されるスープ。
薄黄色のスープは微かに香ばしい匂いを立て、できたての湯気を上げていた。
思わず唾を飲み込んだダルクだったが、先刻の思考がつながり「いや」と首を振った。
「き、君にここまでしてもらう義理はない」
「ん?」
エリアはお構いなしに「どうぞ」とスープ皿を軽く押し出した。
「だ、だから。今はその、お金も何も持ってないし」
「ああ」
エリアはにっこり笑った。
屈託のない天使の笑み。
「そんなこと心配しなくていーよ? 私が好きでやってることだから」
「でもオレはその……ノゾキで……」
「も、もう、しつこいなぁ。そればっかり」
「す、すまない」
エリアはかすかに頬を染め、きまり悪そうに髪をいじりだした。
一瞬エリアの裸体が脳裏に浮かび、ダルクも曖昧な顔で目線を背ける。
あのノゾキの一件は両者にとって触れたくない話題だ。
「……別にいーの。ケガさせちゃった責任くらい取るから」
「ケガさせたって、オレは君の使い魔から噛みつかれたんだけど」
「使い魔の不始末は主人の責任だよ。モンスターを使役する者の常識でしょ」
「そうだけど」
使い魔の責任を取るなどダルクにはあまり経験のないこと。
ディーは滅多に粗相しないお利口さん。
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