30:1[sage]
2010/06/02(水) 18:07:11.60 ID:voI3GIoo
・ ・ ・
――ダルクはスプーンを置いた。
完食。薬味が独特ながら、絶品のスープだった。
「ごちそうさま。最高にうまかったよ」
「どういたしまして」
「この恩はきっと返すよ」
「別にいいって」
膳を下げ、逃げるように炊事場に戻っていくエリア。
垣間見えた照れ笑い。つられてダルクも口端が緩む。
外界に出て一番にこの娘と知り合えてよかった。
可愛い。料理も上手い。なにより、優しい。
まだ確かめてないが、エリアの恋人となった男がいたなら、きっと果報者に違いなかった。
しばらくして当人が戻ってくる。
先ほどとは打って変わって何やら神妙な顔つき。
おずおずとベッドに腰掛け、気難しそうに言葉を選んでいるよう。
声をかける間際、エリアの方から「あの、さ」と切り出した。
「君、こっちに来て日が浅いんでしょ?」
「浅いも何も、まだ一日も経ってない」
「あ、そうなんだ。だったら――気をつけた方がいいよ」
エリアは心なしか少し哀しそうに眼を伏せた。
「気をつける……?」
「うん。こっちに住んでいる人達――とくに街の方に多いんだけど――『闇』属性の生き物をいたく嫌ってるから」
「えっ?」
意外な話に耳を傾けるダルク。
闇の世界ではまったくそんなこと聞かなかった。
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