過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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364:1[sage saga]
2011/03/25(金) 19:14:47.89 ID:OAAFfc9zo
(この無駄打ち……まさか作戦なのか?)

 次第にダルクの方も焦り始める。
 頭を使った戦い方が染み付いているダルクは、彼女が単にヒステリーを起こしているとは考えない。
 どころか前に増して、注意深く様子を見守る。真の狙いは何か。身の回りに変化は。術は何発放たれたか。
 両者の余りにもかけ離れた対極性が、奇妙な平衡を保っていた。

 したがって状況は小康状態だった。
 まずコロッセウムの広場の中心部に火霊使い、及びその使い魔。
 その正面にダルクが生み出した気体状の『黒』いものが、縦横高さで3m分ほど色濃く広がっている。

 さらに火霊使いからは見えにくい位置で、三方向にわたり黒いものが伸びている。
 どれもそこそこの太さで伸びているため、術者がいずれかを使って移動していたとしても把握ができない。
 ひとっ走り分ほど伸びた先は、距離が近くない三点。すなわちコロッセウムの端に点在する石柱。
 すこぶるきれいな左の柱、客席の石のアーチにつながっている正面の柱、短く折れて断面がむきだしの右の柱。
 どれもその根元の部分に『黒』がまとわりついており、奴がいずれかに隠れていたとしても全く違和感がない。

「くそ……仕方ねーな……」

 もちろん彼女は、正面の『黒』から伸びたその三本の存在には気づいていた。
 あの石柱のいずれかに奴が隠れている可能性は十分考えられる。
 ただ、ひどく乗り気ではない。
 相手の張り巡らせたシカケに乗るというこの形、自分の性に合わないどころじゃない。
 なんだってこんな七面倒な択を迫られなければならない、戦いというのは力と力のぶつかり合いだろ。

「おい、これで最後だ! イキジゴクに遭いたくなかったらとっとと出てきやがれ!!」

 コロッセウム中に響き渡る声。
 夜のぬるい風が砂埃を舞わせ、無言で頭髪をなでていく。加えて活火山の低い地鳴り。
 それ以外にあるのは無為に息巻いている自分と、コンだけ。……コン!
 彼女がようやく自分の使い魔と目を合わせる。
 待ってましたと言わんばかりに姿勢を正すきつね火。
 彼女は意気揚々とコンのそばに屈みこみ、期待げに小声で語りかけた。
 
「コン、あいつがどこにいるか分かるか?」 
 
 力なく首をふるきつね火。予想外の返答に「ええっ」と肩を落とす彼女。
 コンはダルクの使い魔・ディーが放ったダークボムの影響で、すっかり嗅覚が狂わされてしまっていた。
 しかし身体ダメージは軽微だったため、体力はすでにすっかり回復しきっている。
 それを示すためにくるりとその場で一回転。尾についている火の玉が幻想的な軌跡を描いた。

「そっか、いけるか! じゃあ……コンはあれを調べてきてくれ。もし奴がいたら噛み付いて足止めしてくれ」

 彼女は声をひそめたまま、『黒』が伸びているうちの一本、左側の柱を指差す。
 きつね火は了解の意をみせ、四足で大きく伸びをする。

「あたしは右の折れた奴を攻撃してみる。両方にいなかったら……あれを挟み撃ちだ」

 そのまま正面の柱を指差す。よし、我ながらうまい作戦ができあがったぞ。
 まず左右に同時攻撃、いなければ真ん中を挟撃。これでカンペキだ!


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