461:1[sage saga]
2011/04/30(土) 17:41:04.42 ID:qsCpNoado
「夜になってからな……」
だがまずはしっかり睡眠を取ってからの話。
身体中がだるくてたまらず、とても一時の憧れだけでは行動に起こせない。
ダルクは再び机にうつぶせた。
それをウィンが再びつつく。つんつん。
「ダル君。起きて」
「『もうちょっとねる』」
「ねてていいから、家のかぎだけあけて」
「あ」
ダルクは跳ね起きた。すっかり忘れていた。家のカギをかけたまんまだった。
この家の出入り口は、ダルクの杖がないとカギの開け閉めができない。
玄関の結界を解かなければ窓だって開かないので、ウィンは今までずっと軟禁状態だった訳だ。
「す、すまない。すぐに開ける」
「ごめんね」
「い、いや。こちらが悪かった」
すぐにダルクは杖を取り、ドアの施錠を解いた。
外から閉めても中から閉めてもカギが必要なのは、いささか不便じゃないか。
まぁ霊使いたるもの、いつでも杖は持ち歩くべしという教訓が養われるということか。
その後、開け放ったドア越しにお見送り。
気がつけばウィンは使い魔のプチリュウをはべらせている。
コートの中に潜り込んでいたのだろうか。そ、そんなにスペースはないはずだけれども。
別れ際、ウィンはこちらに向き直り姿勢を正した。
なにをするかと思ったら案の定というか深々と頭を下げた。
「お世話になりました。この借りはかならずおかえしします」
「どういたしまして。いや別に気にしなくていい、良かったらまた寄ってきてくれ」
「ありがとう。じゃ、またね。あ、それと」
ウィンのふと付け加えた助言が、やけに印象的だった。
「町では気をつけてね」
ウィンがダルクに背を向け杖を掲げると、突然強いつむじ風がダルクの家を襲った。
「うわっ」と顔を覆っているうちに、ウィンは衣服をバタつかせながら上空へ昇っていった。
徐々に風が収まっていく頃にダルクが顔をあげると、すでに彼女は木々の向こうで小さくなっていた。
「本当に空を飛ぶのか……すごいな……」
さすがは風の使い手。素直に感心する。
翼も生えていない生き物が空へ飛翔するという瞬間は、生まれて初めて見た。
風を自在に操る、か。よくもあんなスカートを抑えなければならないほどの強い風を……
いっいや、それはたまたま見上げた視線の先にウィンの下半身があっただけの話で別に他意はない。
「……やれやれ」
風霊使いウィンか。終始マイペースな子だったな。
流れで「また寄ってくれ」なんて言ってしまったが変だったかな。……また会えるといいな。
とりあえず今はまだ眠い。戻ってもう一眠り。後のことは起きてからだ。
さっきから地面に照り返してくる日差しが眩しくてかなわない。
ダルクはあくびもそこそこに、戸口をぱたんと閉めきった。
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