687:1[sage saga]
2011/09/13(火) 16:22:20.39 ID:PFEIZQyvo
「さて少年。まずは名前を聞こうか」
きた。
しかしダルクが口を開くより早く、ジェインの前に進み出た姿があった。
「彼は私の連れ添いです。『闇』などとは関係ありません」
「君は?」
「私は地霊使いのアウス。この町の図書館で、司書を務めています」
ダルクは目を丸くした。
アウスが、自分がかねがね行ってみたかった町の図書館の関係者だったこともそうだが――
今は何より、格上の治安維持隊であるライトロード相手に、毅然とした態度で自分を擁護してくれるとは思わなかった。
出会ってまだ間もないのに、なぜここまで面倒をみてくれるのだろう。
アンティに賭けた自分の闇の杖が、ライトロードに反発するだけの価値があるということなのだろうか――?
「明け方も遠からず、私達は急いでいます。どうか寛大なお見逃しを」
アウスは急いだ口調で、しかし礼節は欠かさず頭を下げた。
うまい。ダルクは内心舌を巻いた。
急いでいるという設定なら、この場を大目に見てもらっても不自然ではない。
「それは悪かった。急いでいる、というならば――尚更どいてもらえるかな」
しかしジェインは穏やかながらも執着をみせた。
「すぐに済まそう。本人の口から身元を明かしてもらうだけだ。後の判断は私が下す」
「ですが」
「急いでいるのだろう? それとも何か別の他意でもあるのかな?」
そこまで言われては、これ以上食い下がるのも無理がある。
やむを得ずアウスも口を結び、ゆっくりと退いた。
(ありがとう、アウス。時間を稼いでくれたおかげで口実が整った)
アウスの気遣いは決して無駄にはしない。
ダルクは顔をあげ、初めてジェインと目を合わせた。
ダルクの黒い瞳に、容赦なく鋭い光がさしこむ。『闇』が抱える弊害。痛いほどの眩しさ。
しかしそんな素振りは微塵もみせず、視線は逸らさない。
ここから先は口八丁で切り抜けるしかない。弱みを見せたら負けだ。
「なんだ。ちゃんと目を合わせられるじゃないか」
視線が交差する中、ジェインが笑みをこぼした。
だがダルクには、その目までは笑っていないように見えた。
「では急いでいるようだから手短に。君は何者だ? 名前は?」
「……オレは」
ダルクは渇いた口を開いた。
それと信じ込ませるために、堂々と、いくばくかの誇らしさを含めて名乗る。
「魔法使い族、地霊使いのクルダ」
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