過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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803:【2/2】[sage saga]
2011/11/10(木) 16:13:47.79 ID:NLbES4SMo
 
 その後ダルクは、こまかな雑貨や小物を着々と買いそろえていった。
 そうして巡り巡って、最初に二人が出会った食品通りまで戻ってきた。
 すでに夕陽は半分以上も沈んでいた。
 
「ついに本命か。パン、果物、野菜、飲みもの、調味料――いろいろ買わなくちゃな」
「やっぱりここ、いい匂いっ」
「頼むから大人しくしててくれよ」
「はぁいっ」


 ダルクはまず、果物を買った。
 リンゴ、オレンジ、キウイフルーツなど、闇の世界にもある品種がカゴ盛り目白押し。
 しかしその瑞々しさや色合いの良さは比べものにならず、外の世界ならではの特長が前面に表れている。
 
「このリンゴを5個と……そのオレンジを3個と、あとそれもくれ」
「まいどっ」
「ボクもこのフルーツ大好きだよっ。美味しいもんねっ!」
「いや、オレはまだ食べたことがないんだ」
「えっ、これ食べたことないのっ? どこにでもあるのにっ?」
「あ、いや、ほら、ここの町のはって意味だよ」
「ふぅん?」

 
 次にダルクは、野菜や穀物を買った。
 レタス、キャベツといった青物がずらりと並ぶ様は、ダルクの常識ではありえない光景だった。
 闇の世界で野菜といえば、もっぱら穀物や根菜類やキラー・トマトだった。
 
「ジャガイモとニンジンと……じゃあそれも試しに、一玉買ってみようかな」
「まいどぁりい!」
「ボク、野菜も好きだよっ! トマトなんか大好物っ!」
「ト、トマトか。食べられるけど、気は進まないな」
「好き嫌いはダメだよっ? なんでも美味しく頂かなきゃっ!」
 
 しかし闇の世界には顔のついたトマトがいて、道端でいきなり噛みついてくるのだ。
 倒しても別のモンスターを呼び込んだりと、相手にすると面倒な野菜である。

 
 その次に立ち寄ったのは、調味料を扱う店。
 塩、砂糖、お酢に、多種多様な香辛料。
 料理がからっきしだったダルクは、どれをどれだけ買えばいいのか分からない。
 とりあえずライナに相談してみたが、
 
「お料理できる人ってすごいよねっ」

 あまり参考になりそうになかった。
 ダルクは仕方なく、師匠と二人暮らしだった頃を思い出し、何となくの感触でそれぞれ買い足していった。
 もっともダルクの師も、不慣れながらやっと身につけたぐらいの腕だったが。
 
 
 買い物も終わりが近い。
 調味料を扱う店から数軒またいだ先、ダルク達が求めたものは飲み物。
 といっても、ダルクの家からは飲み水が調達できるので、どちらかといえば嗜好品としての飲料だ。
 
 その店では、お茶、ジュース、ポーションなどが、小さな甕や小瓶に入って大量販売されていた。
 携帯に便利そうだったので、ダルクは特に美味しそうなジュース、ポーションを多めに購入した。
 
「ほら」
「えっ?」
「一本あげるよ」
「ほんとにっ?」

 そのときのライナの笑顔は、今日一番ダルクの心を揺さぶった。

「ありがとうっ!」
 
 探りあい、騙しあいに長けたダルクだからこそ分かる。
 これは他意の欠片もない、心の底から感謝している笑顔。
 それが逆に住む世界の隔たりを浮かばせ、ダルクに一抹の傷心を与えた。



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