83:1[sage]
2010/06/20(日) 15:54:29.25 ID:AbvfNRQo
引っ越しの際に持ち込んだ荷物はすべて、大型のショルダーバッグ(雑のう)に入れてある。
ダルクはその中をゴソゴソ漁り、やがて灰色の小さな水筒を発掘した。
居間に戻り、食器棚の中からガラスコップをひとつ手に取る。
「まだ引っ越したばかりだから、こんなのしかないけど」
ダルクは指遊びしていたウィンの前にコップを置くと、水筒の中身をドボドボ注いだ。
透き通った真っ青な液体が、コップの半分ほどを満たしたところで水筒を引く。
ウィンがキョトンとしてそれを眺める。
「これ……」
「あ、この水筒まだ一回も使ってないから大丈夫、本当に大丈夫だから」
「そうじゃなくてこれ、なに?」
「え? ……ただのブルー・ポーションだけど」
「ブルー? はじめてみた」
「そうなの?」
「うん。レッド・ポーションなら飲んだことある」
「へぇレッド。オレはまだそっちは飲んだことないな」
闇の世界では割とメジャーだった飲み物が、外の世界ではあまり流行ってないようだ。
こういった見地からも双方の世界を比較するのは面白い。
ウィンは両手でコップをつかみ少しだけ匂いを確かめると、「いただきます」とコップに口をつけた。
初めてブルー・ポーションを飲む者はたいてい渋い顔をするのだが、ウィンの場合。
「おいし」
一気飲み。
薬味が強いせいでなかなかクセのある味なのだが、ウィンはためらいなく飲み干してしまった。
「もしかしてレッド・ポーションとやらに似た味なのか?」
「んーん。結構ちがう」
「よく飲めたな」
「おいしーよ。からだによさそうな味」
「そりゃ身体にはいいけど――」
自分が初めて飲んだときのリアクションとはだいぶ違う。
もしかしたらウィンは味音痴なのかもしれない。
変わった子だからなんとなく味音痴そう。
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