84:1[sage]
2010/06/20(日) 15:58:33.72 ID:AbvfNRQo
ウィンは「ごちそうさま」をしてまもなく、「あー」と思い出したように言った。
「ごめん、いま、あんまりお金ない」
「え?」
「しゅくはくりょうとポーション代」
「ああ」
ダルクはウィンの意外な申し出に感心する。
マイペースながら、ちゃんと宿を借りる立場を自覚する程度の常識はあるようだ。
ダルクはあらかじめ決めておいたことをすぐさま伝える。
「そんなことは気にしなくていい」
「え? でも……」
「その代わりタダなのは今回だけだからな」
ただのブルーポーションが美味しいスープの代わりにはならないけど、エリアに受けた親切を施している気分は味わえた。
ダルクはちょっと得意になる。困っている誰かを無償で助けるというのも悪くはない。
「ありがとう」
微かに笑いかけるウィン。
眠そうな目。
と思った五秒後に、彼女は大きなあくびをみせた。
「ごめん。そろそろ寝ていいかな」
ダルクとしてはまだもう少し異文化の違いについて話したかった気もするが、ウィンが目をこする様子をみてすぐに諦めた。
これはだめだ、寝ぼけて適当なこと話されてもしょうがない。
「ああ、ベッドはそっちにあるから」
「え?」
「あ……ああ、まぁ、引っ越したばかりだから、まだ一度も使ってない、大丈夫」
「そうじゃなくて。わるいよ」
「え、悪いって?」
「わたしここで寝るよ」
「ここで?」
テーブルにうつ伏せて寝るって? し、しかしそれは――
刹那ダルクの脳裏に、エリアがテーブルで寝ている姿がフラッシュバックした。
直感的にまずいと感じる。
「い、いいって、ベッドで寝ろよ」
「え? でも――」
「オレはまだ寝ないからいい。夜行性なんだよ」
「ふぅん……。じゃーオコトバにあまえようかな……」
ずるずると席を立ち、示されたベッドの方へのろのろ向かうウィン。
ほっとするダルク。
今回はエリアのときとかなり勝手が違うが、少なくともあの時のような気まずさを招く展開だけは避けなければ。
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