過去ログ - 澪「好きだよ。………好きだった」
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2:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/30(日) 21:20:05.41 ID:ioYr9QDO
その夏の合宿は、楽園みたいな時間だった。砂浜を歩いて振り返ると、遠くまで足跡が続いている。
そんな楽しさをもって、私はその夏を何度も思い出す。
四人での練習は実際のところ捗らなかった。ぐうたら律にゴロゴロ唯で、ムギはうふふ。
けれど、溶けたアイスみたいにだらっとした時間を過ごすのは意外と好きだった。
3:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/30(日) 21:21:55.03 ID:ioYr9QDO
――――どこまでも続く白い海岸線と、歩いてきた足跡。
それらが波や風によって簡単に消えてしまうように、この線香花火の思い出さえいつか風化すると思うと、切なかった。
やがて、ぽとりと灯が落ちる。
しんみりとした中で唯だけが、なにかごそごそやっていた。
4:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/30(日) 21:23:52.19 ID:ioYr9QDO
無邪気に笑う、少女。
潮風に髪は撫でられ踊る。
暗闇を照らす幻想的な光の中で、軽やかに歌いながら、唯はギターを掻き鳴らす。
私の胸を、音速や光速すらも超えたスピードで、貫いていく何かがあった。
5:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]
2010/05/30(日) 21:30:35.87 ID:44.oikAO
支援
6:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]
2010/05/30(日) 21:57:53.18 ID:zDn15hs0
サッカー観ながら支援
7:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage]
2010/05/31(月) 00:20:30.48 ID:TzvkxMw0
テスト勉強しながら支援
8:気に入りません ◆EXypm9zea.
2010/05/31(月) 02:29:17.90 ID:M15Jb.DO
それが最初だった。胸を撃ち抜かれたのは。
ヒットマンは唯だ。四六時中私に不意撃ちを狙ってくる。
例えば練習中、律の走り気味なシンコペーションをうまくカバーする唯を褒めたりする。
すると唯は急にしおらしくなり、もじもじとして曖昧に微笑む。
9:気に入りません ◆EXypm9zea.
2010/05/31(月) 02:30:38.18 ID:M15Jb.DO
明るさが取り柄、もとい明るさくらいが取り柄の唯は、わりと失敗が多い。
日に三度も、クラスの異なる私のところまで教科書を借りに来たり、そのまま返すのを忘れたりする。
そういう唯だからこそきっと、褒められると嬉しいんだろう。
それは引っ込み思案でなかなか人前に立てない私が、大きく共感する部分でもあった。
10:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/31(月) 02:32:14.93 ID:M15Jb.DO
「……駄目だ、次……」
次の言葉は浮かんでこなかった。
メモをちぎっては投げちぎっては投げ、何度繰り返したことだろう。
一向に終わりが見えない泥さらいのような作業にも、とうとう限界がきた。
11:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/31(月) 02:33:58.24 ID:M15Jb.DO
頭を切り替えるために、お風呂に入ることにした。
湯槽に浸かって一息つくと、湯煙の立ち上る先をじっと見つめた。両の手で湯をすくって、意味もなくそこに映るぼやけた顔を眺めた。
あの時、唯の右手を握ったことばかり思い出していた。
ふと、頭の中が唯で一杯になっていたことに気付き、慌てた。
12:気に入りません ◆EXypm9zea.[sage]
2010/05/31(月) 02:34:46.53 ID:M15Jb.DO
適当に勉強を済ませて、日付が変わる頃に床についた。
暗い部屋の中で、今夜は唯を夢に見るような予感がした。
けれど、気が高ぶり始めたお陰で、いつまでたっても睡魔の誘惑はやって来なかった。
明け方になって空が白み始める頃に、ようやく私は意識を手放した。
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