595:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]
2011/02/23(水) 17:12:27.35 ID:dusS23yA0
麗「どうして海晴姉さまたちが戦争なんかに行かなくちゃいけないわけ!? そんな汚らわしい男たちが勝手に始めたことに私たちが巻き込まれなくちゃいけないわけ!?」
氷柱「そうよ! だいたいママも何考えてるのよ! 実の娘達を戦場に送り込むなんてどういう神経してんのよ!?」
家族の中でも極度の男嫌いで『小学校はみんな公立!』のルールを曲げて私立の女子校に通っている九女の麗や特進クラスに通って戦争なんて愚かしくてくだらないこととわかっている氷柱の二人がやっぱり大反発した。
さくら「お姉ちゃんたち、遠くに行っちゃうの? もう海晴お姉ちゃんのおいしいプリンも食べれなくなっちゃうの? さくら、そんなのさみしくなっちゃうの……うわぁーん!」
綿雪「ユキも……せっかく病気が治って、家族みんなで暮らせるはずなのに……」
小雨「さくらちゃん、ユキちゃん、泣かないで……ね」
真璃や虹子、青空もつられて泣き出す。年少組の彼女たちは戦争はよくわからないが、『大好きなおねえちゃんがいなくなる』ことが嫌なのだ。
小学生で少しは物事がわかるようになっている星花や夕凪、吹雪も普段の元気をなくしてしまっている。
それを見てヒカルは酷く胸が締め付けられる思いだった。
あさひ「ばぁぶ! だばっぶ! ぶっぶー!」
赤ん坊のあさひも怒っているように見える。それを声援のようにして氷柱はまた机を叩いて声を荒げた。
氷柱「ホラ見なさいよ、あさひだって大反対よ! それでも姉様たちは行くっていうの!? 立夏まで連れて!」
立夏「氷柱オネーチャン! 立夏はイヤイヤ行くんじゃないよ!」
氷柱「だから! そういう考えが甘いって言ってんのよ! どうしてウチの家族ってばこうもお人よしばかりなのかしら!」
バンッ! と一際大きい音で机を叩く。それにシンクロしたように咳き込む声が聞こえた。
観月「げほっ、う、うぅ……」
蛍「あぁ、氷柱ちゃん、大声出しちゃだめよ……観月ちゃんに響いちゃう」
氷柱「あ、ご、ごめんなさい、ホタ姉様……」
九尾の狐の守護霊を持つ観月は人一倍霊感に鋭く、その影響を受けやすい。
人の魂の行き着く場所とされているバイストン・ウェルからやってきたオーラ力にあてられてしまったのである。
気が強いが、それ以上に家族の身を心配するゆえに熱くなる氷柱だが、乱れた呼吸を繰り返す観月にさすがにクールダウンした。
それを見計らって蛍と一緒に観月を看ていた三女の春風が優しく声をかけた。
春風「ねぇ、氷柱ちゃん。氷柱ちゃんがすごくみんなのことを想ってくれているのはとてもよくわかるわ。海晴お姉ちゃんに霙ちゃん、ヒカルちゃんと立夏ちゃん……春風だってすごく心配だもの……いなくなっちゃうのはイヤ……でも、ママがもっと心配したのは、みんなが本当の意味でばらばらになっちゃうことなの……」
氷柱「は、春風姉様……」
春風の言いたいことが、氷柱にはわかった。現在は歴史が大きく動こうとしている時代なのだ。
その世界で、ただそこにあるだけで奇跡のような十九人姉妹が、いつ引き裂かれるのかわからない。
だから、彼女たちのママは――
霙「私たちはなにも死ににいく訳じゃないさ、氷柱」
氷柱「霙姉様……」
ここまでずっと一言も喋ることがなかった霙の声音は、この場で最も意味のあるものとなった。
霙「とどのつまりは、ここに帰ってくるために、少し長く家を空けるだけさ」
氷柱「そ、そんなこと言ったって……か、かえっ」
それ以上は氷柱の喉から出てこなかった。そこから先のことを想像するだけで心臓が張り裂けそうになる。
海晴「氷柱ちゃん」
端正な顔がぐしゃぐしゃになるのを必死で止める妹を、長女の海晴がそっと抱きしめた。
何度こうして抱擁されたことだろう。そして、これから何度こうしていられるのだろう……
氷柱「海晴姉様……」
海晴「私たちが出かけるのは遠い場所かもしれない。でも、帰るおうちがないと、私たちもがんばれないわ。だから、氷柱ちゃんはここでみんなを守ってね。春風ちゃんと蛍ちゃんだけじゃ、ちょっと頼りないからね」
氷柱「……はい」
氷柱がその夜、何年ぶりかの大泣きをしたのをヒカルは知っていた。
午前三時、こっそりと家を出ようとしたヒカルたちを家族全員が起きてきて盛大に見送られた。
そのために、氷柱が全員をたたき起こして自分の部屋に集めていたこともすぐに気づいた。
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