過去ログ - 唯「まじーん、ごー!」
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682:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga ]
2011/03/06(日) 18:12:36.75 ID:vFt0CWIc0

ギレン『思い起こせよ! 我、ジオンの栄光ある国民よ! 諸君らの肉親の死を追って、我、愛するガルマが死んだ! なぜか!』
 
シャナ「坊やだからさ」

 軍用ジープの中でその嘲笑は、フルボリュームのラジオにかき消されていた。

ギレン『ガルマは、闘いに疲れた我らに鞭うつために死んだのである! 同胞の死を無駄にするなと叫んで死んだのである! 彼は……! 諸君の愛してくれたガルマは、ジオン公国に栄光あれと絶叫して死んだ! なぜか! ジオンの、いや、諸君ら、英知を持った人類による人類の世界こそ、真の人類のあるべき姿と知るからこそ叫べたのである。ジオン公国に栄光あれ、と! 起てよ! 国民! 今こそ、我らの総意をもって地球の軟弱を討つ刻である! ジークジオン!』

 ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン! ジークジオン!

 ギレンの憤激を受けたジオン国民が解放した熱にシャナは頭が痛くなった。
 いや、頭痛の原因は耳障りなラジオではない。軍籍を失ったシャナを慰労館へ連れて行く部下の気遣いのせいでもない。

アラストール「大丈夫か、シャナ?」

シャナ「またよ……また……」

アラストール「しかし、我にも気がつかぬこととは、誠なのか?」

シャナ「…………」

 天上の劫火の問いにシャナは応えなかった。
 ギレンの演説が終わり、ラジオのスィッチが落とされたからである。

ジオン兵「着きましたぜ、少佐」

 荒野の貧民街の外れにある瀟洒な建物。三階建てだが、一階の喧騒に比して二階三階は隙間なくカーテンが閉められている。
 一階の酒屋で指名を受けた娼婦が上の階で客の相手をする典型的な娼館だが、手前上あくまでも慰労館である。

 もちろん、女であるシャナにこんな場所は無意味である。
 なのに、彼女はここに来ることを選んでいた。

 膝までの長い髪を乾いた風になびかせるシャナの前を行くジオン兵がウェスタンドアを開いて酒屋に入る。
 アルコールとタバコと硝煙――それとドラッグの匂い。ジオンの高官が来ているというのに、場は怒号と交渉で個々に盛り上がっていた。

シャナ「――ッ!?」

 見られている――いや、このざらついた感覚はそう、見透かされているようだ。

 シャナはその視線を探す。いた。一番端のカウンター。
 浅黒いインド系の肌の女だ。年齢はよく十代であることは確かだが、一にも見えるし九にも見える。

 目が合ったとき、薄く微笑んだ。それは娼婦が客を取るための媚びたものではない。

シャナ「お前、何を見た?」

 まっすぐにその女の許へ行き、シャナが訊ねる。

「あなたたちの後ろにあるもの……奪ったものかしら」

 シャナは驚愕した。この女には、正しいものが見えている。
 女の額でヒンドゥー教徒のビンディーがつぶらに光る。

シャナ「お前……名前は?」

「……ララァ。ララァ・スン」



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