過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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511: ◆3vMMlAilaQ[saga]
2011/01/12(水) 00:05:54.30 ID:lMTN03X50

雪は好きだけれど、寒いのは苦手だ。

湿り気を帯びた重たそうなぼたん雪が舞い降りる中、番外個体は改めて自分が寒さに弱いことを実感していた。
普段はマフラーと最近買った手袋で完全防寒しているものの、今日は飛び出してきたせいでコートを着ているだけだ。
それに加え、玄関でブーツを履いている様な時間もなかったから足下も寒い。


(ロシアで着てたのを引っ張り出してこようかなぁ)


服装やメイクに力を入れる麦野から怒られそうな白い戦闘用のスーツを思い浮かべる。
女としてはどうかと思うが、内部に好きなだけ詰め物もできるし暖かいし、意外と便利な代物だ。

コートの襟を立ててビル風を防ぎながら夕方の薄暗い空を見上げると、落ちてくる雪に吸い込まれてしまいそうな、不思議な感覚にとらわれた。
天気が良いとは言い難い曇天に、気持ちまでもつられて沈み込みそうになる。


(気持ち、なんて。……このミサカにあるかは甚だ疑問なんだけどね、けけっ)


麦野と別れる際、『一緒に乗り込んであげようか』と心強くもあり恐ろしくもある提案を持ちかけられたものの、お断りしていた。
あの花畑と麦野が対峙した場合麦野が何をしでかすか分からないというのもあるが、彼女に頼りっぱなしというのは甘えだと虚勢を張ったのだ。
ちなみに花畑と麦野のツーショットを、それはそれで見たい気がすると思ってしまうのは番外個体が好奇心旺盛だから、ということにしておく。


「寒う……」


風が頬を撫でていく。
冷たいというよりは鋭いそれに、耳や頬がじんじんと痛んだ。
こたつが酷く恋しくなって、けれど今、自分の居場所は残っているか、あの花畑がぬくぬくとしているのだろうか、などと考えるとやるせなさに襲われた。

爪先が冷たいのも手伝って、足取りが重く感じる。まるで家に帰るのを拒むかの様だった。
そしてどことなく不安定な少女は雪が降りしきる中、遂に、のろのろと歩くことさえ止めてしまう。



――追いかけてなんてこないことも探しに来てくれないことも明白で
――それを望む権利すら自分に無いことも、嫌というほど承知していた



なのに。どうして。



「――どうして、あなたが居るの」


驚きや戸惑いを隠せない視線の先には、雪の如く真っ白な、学園都市の第一位。


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