過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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580: ◆3vMMlAilaQ[saga]
2011/01/25(火) 23:31:25.82 ID:wQpE6FjR0

暖房の稼働音、時折響く、かちゃかちゃと食器が触れあう音と微かな息遣い。

会話は、ない。

ただ黙黙と食わせ食わされの男女の絵は、それだけみれば少し異様な雰囲気かもしれない。
しかし、互いに頬を紅く染めて、正面――相手の顔を見れないでいる姿は初々しくて、どこか微笑ましいものでもあった。
学園都市の闇そのものと言っても過言ではないような二人でも、『表』の世界で暮らしていれば年頃の高校生であることに違いはないのだ。


「あ、そうだ。タオルとか、いるかな? 身体、拭くでしょ? ミサカが持ってくる」


ふーふーしてあーんなどという、恥ずかしながらも世の男が憧れる様なことをやってのけた番外個体の顔は酷く紅い。
一方通行を少しからかってやるのが目的だったのに、もしかすると、
少しの照れでも簡単に分かってしまう真っ白な彼よりも羞恥の色をはっきりと表しているかもしれない。
そしてそれを誤魔化すように、彼女の方から沈黙を破った。



――こいつは、俺という男に対してもこんな表情をするのか。


一旦器を小脇に置き、俯いたままシーツを弄る番外個体をぼんやりと眺める一方通行。
さらさらとした細い茶髪の間に見え隠れする耳まで赤くして、自爆とでも言うのだろうか、自分からやり出したくせに滑稽だ。
今何を考えているのだろうか。それが妙に、気になった。


「……ン、じゃァ頼むわ」


大人しく番外個体の提案を受け入れる。
どうせシャワーを浴びると言おうが自分で取りに行くと言おうが、
たかが風邪の初期症状を大事の様に捉えている番外個体はそれをさせないだろう。


「うん。ちょっと待ってて」


立ち上がった番外個体は、お粥の入った、未だに湯気を上げる保温効果抜群の鍋を持ち上げると碌にこちらも見ずに部屋を出て行ってしまう。
それを見届けて、一方通行は小さく息をついた。
学園都市第一位と言えど、緊張するときだってある。自分の想う女が相手であれば尚更だ。

番外個体がドアを開けたことで廊下から流れ込んできた冷気が程よく室温と混じり合い、そんな空気の中でベッドに横になった。
暖かな温度、良い子は寝ている時間帯、食後、緊張から脱した安堵。
様々な条件が重なったことで眠気が誘発される。


――気付くと、睡魔に逆らえずにうとうとと微睡んでいた。
決して悪い気持ちなどではなく、寧ろ心地の良い、そんな気分の中で眠りに落ちていく。


そして、そんな日こそ。そんな日に限って。



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