過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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644:1 ◆3vMMlAilaQ[saga]
2011/02/06(日) 22:24:45.11 ID:3wCZGTLdo
「手、だァ?」
「はい。あ、もしかしてまだそこまで進んでませんかぁ?」
ならこの機会にどうぞどうぞとでも言わんばかりのその言い草に、一方通行は気取られない程度に眉をひそめた。
身体の関係を持ったことがあるのに対し、キスはおろか、手を繋いだことすらない。
優先順位というか、明らかに順番が狂っている。
ましてや、ただの同居人。順番云々以前に、身体を重ねてしまったことすら過ちで。
そんな可笑しくて曖昧、少し掻き回せば呆気なくぐちゃぐちゃになってしまう様な関係。
それを第三者から改めて思い知らされると、酷くどうしようもない思いにさせられる。
手を繋ぐという行為は、女からしてみれば少なくとも憧れくらいにはなる、意外に重大で重要な行為ではないかと一方通行は考える。
そしてそれは番外個体だって同であろうことで、ましてやこの歳だ。
実年齢と精神年齢は幼いが、それでも実際、恋愛事情に一喜一憂したことだってある。
何処かのクソガキがふらふらと歩き回り、挙げ句の果てに迷子になったり攫われたりを防止する為に手を握るのとはわけが違う。
「ね、そんなに怖い顔しないでよ。ひゃひゃ、確かにまぁ、ミサカ達が手繋ぐってのは、うん、滑稽だよね。
……ギフトカードはちょっと惜しいけれど。あなたが嫌だって言うんならミサカは強制できないし」
「別に嫌だなンて一言も言ってねェじゃねェか。大体、オマエはどォなンだよ。好きでもない男とそォいうことするの」
「……そうやってあなたはいっつもオマエオマエって言うけどさぁ。ミサカは別に壊れ物でもなんでもないし、ていうか寧ろその逆だし。
だから、」
左手を、とられる。指がするすると絡め取られた。
番外個体の手は気温故か冷えていて、おっかなびっくりとでも言うのだろうか、微かに震え、ぎこちなく。
……こっちだって、壊れ物でもなんでもないというのに。
何となく雰囲気的に真面目臭くなってしまっているのだが、実際に互いの手を握るというのは、やはり。
「手繋ぐだけだしねぇ、うんうん、ロシアでも握手したしぃ!?」
「だ、だよなァ。丁度寒ィと思ってた所だし、懐炉いらずで地球にも優しいじゃねェか!」
「ぎゃっは、地球の自転ベクトルどかーんとやっちゃったヤツがそれ言うわけ? ていうかあなたの手冷たくて死人みたーい☆」
「オマエだって血ィ通ってっかァって聞きたくなるけどなァ」
HAHAHAといつもとは少し違ったテンションで無理に盛り上げる。
異性と手を繋ぐという慣れない行為は、まだまだお子様な二人には少々刺激が大きかったかもしれない。
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