過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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645:1 ◆3vMMlAilaQ[saga]
2011/02/06(日) 22:26:09.58 ID:3wCZGTLdo
「それじゃ、撮りますよー。自然な感じでお願いします」
半ば強制的に手を繋がせておいて、『自然な感じ』とはどういうことだ。
そんな突っ込みを自粛して、一方通行は相変わらずの仏頂面で立つ。
その横の番外個体はというと微かに口角を上げ、写真スマイルを浮かべている。
端から見ると、付き合って間もない恋人同士のできあがりだ。
白いフラッシュが焚かれ、始まりが遅かった撮影は簡単に終わりを迎える。
目の奥に焼き付いた光がチカチカと二人の視界を悪くした。
「はい、お疲れ様です。協力有り難う御座いました」
じじじ、と微かな機械音を鳴らしながら、カメラから写真が吐き出される。
それと一緒に包装されたギフトカードが差し出され、
「ぎゃは、あなたもっと愛想良くできなかったの? なーんか睨まれてる感じがするけど」
「うるせェよ、この俺がニヤニヤ笑ってたらホラーだろォが」
番外個体から写真を奪い取る。
……不機嫌そうな表情、鋭い眼光。これで雑誌なんかに載せられるのだろうかと疑問に思う。
「……、慣れてねェンだっつの」
「はーいスマイルの練習痛ぁっ!」
顔を覗き込みながら茶化してくる番外個体のやわらかい頬をむにーっと抓ってみると、
彼女は間抜けな顔をしながら突然の攻撃に目を白黒させた。
「何するんだよういきなり! しかも自分はしたり顔っていうのがすっごいムカつくんだけど」
「買い物して帰るか。今日は準備とか面倒臭ェから簡単にパスタだなァ。異議は認めねェ」
「うん、ミサカパスタ大好き。クリームが良いな」
笑っているのはコイツだけで十分だ、と一方通行は思う。
隣を歩くこの少女がただただ呑気に笑っていれば、それで良い。不足はないし、それ以上の贅沢は望まない。
行き場と温もりを失った左手は宙ぶらりんで、どこか寂しげに虚空を描く。
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