123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/26(水) 22:33:22.57 ID:I8qI0aago
陽の色と共に街の色が変わりつつある。
青空を写していたビルの窓ガラスは反射する光をだんだんとオレンジに変化させていった。
時間のグラデーション。単なる大気の起こす光の変化だとは分かっていても柔らかな光はどこか幻想的で、同時に哀愁を誘う。
それはまだ小さかった頃。夕日はお別れの合図だった。
暗くなる前に帰らなければいけない。それがどうにも許せなくて、沈む太陽を恨むなんて事もあった。
お天道様からしてもいい迷惑だ。でも、また明日会えるとは分かっていても名残惜しいのには変わりない。
いっそこのまま時間が止まってしまえばいいのに。そう思った事もあった。
でも時間は止まらない。
その流れは不可逆な一方通行。たとえ神様にだってどうにもできないものだろう。
「――で」
アイツの声に私は足を止め、振り返った。
ざあ、と風が吹き河原に生える背の低い草が啼いた。
目の前を流れる川はビルの壁面と同じ色をしている。あと少しもすれば鮮やかなオレンジ色にきらめくだろう。
遠くでモノレールが橋を通過する時の重々しいくぐもった音が聞こえてくる。
「なんなんだ、こんなとこに連れてきて」
そう言うアイツはやっぱりちょっと寒そうで、でも私は借りた上着を返す気なんてさらさらなかった。
「そうね……」
私は一瞬、アイツにどんな顔をすればいいのか迷って――結局、苦笑してしまった。
「あえて言うなら、いい加減に決着をつけようかなってトコかしら」
自分でもこれは苦笑するしかないって思う。
要するに私はらしくない感傷に浸っているのだ。
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