152:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 20:16:21.27 ID:Vac5WSOJo
「ほら」
声に俯いていた顔を上げると、目の前にアイツの手があった。
ぶら下げてるのはレモネード。一体どこに行ったのかと思ったら。何よ、お金ないくせにさ。
「それでよかったか?」
「……ありがと」
両手でそれを受け取る。あったかい。
少しかじかんだ手でプルタブを開けて口を付けると甘酸っぱい味が口の中に広がる。
ゆっくりと飲み込むと熱が喉を通り過ぎて、それから胸元がほんのりと温かくなった気がした。
「少しは落ち着いたか?」
そう言うアイツこそ内心穏やかじゃないだろうに。
ベンチに座る私の隣に腰を下ろし同じように缶を開ける。ミルクココア。一口飲んで、「あち」と小さく舌を出した。
その仕草が何だか妙に子供っぽくて可愛くて、私は思わずくすりと笑ってしまった。
「……うん」
両手で暖かいレモネードの缶を膝の上に置くように持ち、私は視線を上げる。
空はそろそろ赤くなってきている。
夕日に照らされた公園は私とアイツの座ったベンチ以外に人影がない。
表通りの喧騒も遠く、風に木の葉が揺れるさわさわという音が何だか凄く寂しげだった。
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