164:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/29(土) 21:40:10.91 ID:Vac5WSOJo
辺りはすっかり夕日の色に染まり、なんだか世界が燃えているようだった。
公園に茂る木々の上から覗くビルの屋上で風力発電のプロペラが回るたび、きらり、きらりと光を反射して輝いていた。
左手が持つレモネードの缶はもうすっかり冷めてしまっている。
でも反対側、右手の握るアイツの手からは冷たさが消え、人肌の温もりが伝わってくる。
しばらくお互いに無言の後、アイツはゆっくりと息を吐いた。
まるで今まで心の奥底に溜まっていたものを吐き出すように、深く。
アイツは今までずっと隠し続けていた全てを私に洗いざらいぶちまけた。
正直なところ鵜呑みにするなんてできるはずもないようなとんでもない内容だったし、多分その十分の一も正しく理解できていない。
たった三ヶ月ちょっとの間の出来事なのにアイツの話は違う世界のもののようで、現実味なんてこれっぽっちもなかった。
でもきっとそれが真実。
「……やっと」
小さく呟かれた言葉に思わず私は握る右手に力を込めた。
「やっと……言えた……」
それは心の底からの言葉だったのだろう。アイツはまるで憑き物が落ちたような顔をしていた。
悲しみとか苦しみとか、そんなのが一緒になって複雑な色をしていたけど、それでもどこかすっきりしたような顔だった。
「ずっと言いたかった」
うん。苦しかったよね。
アイツは人がいいから、ずっと嘘をつき続けるなんて凄く苦しかったはずだ。
「ずっと謝りたかった」
うん。辛かったよね。
アイツは人がいいから、ずっとそんな自分を許せないでいたはずだ。
でもね。
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