581:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/04/19(火) 06:14:42.62 ID:Rmhix0EDo
「――――あ」
視界がぼやけて見えるのは朦朧とした意識の所為か、それとも涙を浮かべているのか。
意識が薄れる。
白か黒かも分からない場所に落ちていくような感覚の中、絹旗の脳裏に走馬灯のように色々なものが浮かんでは消える。
『アイテム』の皆の顔が過ぎる。
麦野、フレンダ、滝壺、そして――。
「――――っ」
消えかかった意識を意思の力だけで強引に叩き起こした。
浜面。彼の顔が浮かんだ途端にどうしてだか無性に腹が立った。
彼がここまで活躍しているのに、果たして自分はここで寝こけてしまっていいのか。
たとえ絹旗が何もせずとも全てが上手く行くとして、だからといって何もせずにいて良いのか。
――いや、上手く行くはずもない。今、自分はどうなっている。
虚ろな視線を投げればそこには黒夜海鳥が立ち上がっている。
彼女もまた絹旗と同じように通常の何分の一も力を発揮できていないだろう。
けれど今受けた攻撃は彼女の能力に因るもの以外にあり得ない。
そして彼女は立ち上がっている。
だとしたら絹旗もまた。
(私は――まだ立てる――!)
軋む体を奮わせ、絹旗は立ち上がる。
全身に力は入らず意識もあやふやだ。
そんな状態でも絹旗は立ち上がらずにはいられない。
敵はまだ目の前にいて、守るべき者も帰るべき場所もある。
それがどれだけ最悪でも、絹旗にとっては最愛そのものだ。
そして何より――――。
(浜面だけに――超いい格好させて堪るもンですか――!)
たとえ端役だったとして。
この舞台、この場。
彼女の世界の主人公は、他ならぬ彼女自身なのだ。
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