60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/15(土) 20:06:21.52 ID:i9Jg8O//o
どうしたもこうしたもない。今になってようやくこの現状がデートだと自覚した事で私の頭はパンク寸前だった。
散々今まで現実逃避してきた反動だからか、抑圧されていた意識が突沸してもう大爆発してしまった。
恥ずかしいとかそういうレベルの問題じゃない。何がひどいって、今まで無自覚にデートをしていて、あまつさえそれをどこか楽しんですらいたのだ。
全然嫌じゃなくて、それはもう本当に私はアイツとデートがしたかったとどこか望んでいた事に他ならない。
さらに言えば未だに私の左手はアイツの右手を握ったままだ。
それを認めたくなくて、でも認めざるをえなくて、認めたら負けだなーとか思いつつ認めてしまいたい自分と目を瞑り耳を塞ぎたい自分が葛藤していてああもう――!
「……ふにゃー」
ぶしゅううう、と空気が抜けるエフェクトをまといつつ私はほおずきのように顔を真っ赤にしてふらふらとよろめく。
どう見ても変な人だ。そんな事すら考える余裕もないんだけど。
「おい……!?」
突然の私の奇行に驚いたアイツが慌てて手を引っ張る。支えようとしてくれたのだろう。そのまま左手を差し出し――。
瞬間的に両手を跳ね上げ全力で後ずさって何とか回避した。ああっなんで手を離しちゃうのよ、ってか折角のチャンスなのにもう色々おバカー!?
「大丈夫! 大丈夫だから!!」
「お、おう……!」
お互いに錯乱していたのだろう。力強く頷きあって、その後「何やってんだ私は」と急に素面に戻ってしまう。
お陰で表面上はどうにか落ち着くことができたのだけど。
(顔が……見れない……っ!)
頬の紅潮はどうしようもなく、心臓もばくんばくんと鳴り響いている。
落ち着け私。深呼吸しろ。素数を数えるんだ。
頭の中で必死に「落ち着け、落ち着け」と繰り返してしまっているあたりまったく落ち着けてないのだけど、体裁を保つために白々しくワゴンの中を物色する。
「あ。これかわいいなー」とか棒読みで適当に言ってるけど当然ながら自分が何を手に取っているのかまったく分かっていない。ポーズだけでも大事。
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