608:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/03(火) 00:13:50.06 ID:5TTI5Zn6o
視界の外、直前まで浜面がいた空間に何かが現れ、重力に引かれ落下した。
ぱさっ、と乾いた音。
査楽が撒き散らしたファイルだった。
空間移動能力によって移動すれば、問答無用で出現座標の空間を押し割る。
ただの薄っぺらな紙切れだろうとダイヤモンドを切断する。
そういう意味ではあらゆる物体が絶対切断の威力を持つ。
刃物だろうと銃器だろうと、ただの書類ファイルだろうと等しく空間を割断する。
一瞬でも体勢を整えたりと思考する時間を作っていれば死んでいた。
「ぐうっ……!」
無理な回避の所為で肩をしたたかに打ちつけた。
床を転がり、肩の痛みを無視して立ち上がる。
視線を査楽に向ければ、そこには。
「――――――」
あまりの異様な光景に浜面は絶句した。
査楽の周りを、まるで土星の輪のように物体が浮遊していた。
椅子。ファイル。ペン。鋏。パソコン。小さな置時計。メディアディスクとそのケース。
プラスチックのケースは蓋を開け中身をばらまきながら浮かんでいる。
それらが輪を描き、机の上に突っ伏したままの査楽の周囲を旋回している。
ときおり明滅するようにそれらの像がぶれ、次の瞬間リング軌道上の別の場所に現れる。
それでもリングを形成する集団から外れた鋏が、乾いた音と共に床の上に突き立つように出現する。
刃ではなく握り手を下に。V字に刃を突き出して。
重力と空間を無視したある種幻想的な光景。
そのあまりの異様さに浜面は動けずにいた。
査楽を乗せていた机がふっと消えリングの一団に加わり、それに伴い査楽がさらに落下する。
胸を打ち付け肺の中身を吐き出した査楽の頭上、彼の意思は関係ないと言わんばかりにリングは緩やかに回転し続ける。
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