過去ログ - 佐天「嫁にして下さい!」 一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
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785:貧乏螺子 ◆d85emWeMgI[saga]
2011/01/09(日) 04:04:29.65 ID:eAcK7RE0


抱きしめてから、一方通行は深い後悔に囚われていた。
殆ど衝動的な行動だった。
自分をからかうべく無防備に近づいた佐天に怒りすら覚えた。
無邪気な中に秘めた強さを、それを知っているからこその焦燥感に駆られて閉じ込めるように引き寄せてしまった。
恋心 ――― とは決して口にしたくない気恥ずかしいこと極まりない感情を、それでも自覚したのはつい先日。
罪悪感だと甘い女は口にした。罪悪感かと自分は納得した。
女友達がいる中で、他の女と情事に耽り、快楽を貪ることに気が咎めることは無いだろう。
しかし、恋する女がいて、それとは別の女と行為に至れば、罪悪感や後悔に襲われるに違いない。
それは、一方通行にも想像できる。まさに、彼がその通りになっていたのだから。
そうして、ようやく、宙ぶらりんとなっていた不安定な感情があるべき場所へと落ちていった。
しかし、それで突然世界が一変するわけでもない。
少なくとも一方通行はそうだった。


目にするものすべて、世界の風景が一辺にに変わるような恋に落ちる者がいる、

一方で、シロップのような甘い沼に足元から気付かぬ内に沈んでしまうような恋をする人間がいる。


本やテレビで目にするような電流が走るような鮮烈さでも炎が一気に燃え上がるような猛々しさでも無い感覚。
カップの底でゆっくりとけていく砂糖のように、甘い感情は静かに一方通行の心の底からじわりと広がっていった。
まるで毒のように、病のようにゆっくりと侵食していく感情に、名を付け納得だけはしていた感情に一方通行は次第に侵されていった。
それを促したのは佐天。日々、笑顔を振りまいて自分の元にくる少女に、一方通行は苛まされることになる。
佐天の想いは知っている。彼女の口から聞いている。何度も。そして自分の想いもはっきりと自覚している。
一方通行を苛む彼自身が、佐天にはっきりと告げていないという事。

要は、一方通行という恐ろしくわかりづらい律儀さを持つ少年は、彼女に言葉でもって想いを告げない限り、先に進めないという戒めを自分に作り出していた。


想いを言葉にして伝えていないということ。伝えようと決意するものの、彼女をいざ前にすると出来ない。
それが日々続き、一方通行自身を焦らせ、更に彼を苛むことに繋がる。
言えぬまま過ぎていた一方通行は、破裂寸前の風船のように張り詰めていた。




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