436:貧乏螺子 ◆d85emWeMgI[saga]
2011/01/21(金) 21:49:23.71 ID:fSpuMihf0
「ったく……テメェで聞いておいてテメェで照れてンじゃ世話ねェよ」
「てへ。それは言わないで欲しいなぁ。でもね、ミサカとっても嬉しいの」
自分の頬を撫でる一方通行の手をそっと握る。
頬から伝わる一方通行の温もりを静かに受け止めるように瞳をそっと閉じる。
「最初に貴方に見てもらって、最初に貴方に綺麗って言って欲しかったんだもの」
とびきりの秘密を打ち明けるように、可愛い少女の抱いていた夢を、そっと呟く。
その無垢さに、一方通行は一瞬言葉に詰まる。
ひたむきな、他愛も無い夢を愛しそうに囁く少女は、世界で一番、彼にとっては嘘偽りなく愛しかった。
そして、震える唇にきゅっと力を込める。まだ泣くのは早い。そう心の中で呟く。
「……ハッ……そいつは光栄だなァ……ああ、ホントに堪らなく幸福だァ……」
「そうだよ。もっと栄誉に感じてねってミサカはミサカはお姫様気分で貴方を見遣ちゃう」
悪戯っぽくぺろりと舌を出す打ち止めにバカと言って軽く額を指先でこつんと突く。
他愛も無いじゃれあいが、今日はどうしてか掛け替えの無いものに感じる。
それは今日と言う日が一つのターニングポイントだから。
「あァ〜〜クソ。本当幸せ者だな。何か腹が立ってきやがった」
わざとらしく声を上げる。
震えぬように、細心の注意を払って。この少女の前でみっともない真似が出来るか。
そう、精一杯の虚勢を張る。
この少女の前で、いつだって自分は見栄を張っていた。
下らないプライドと呼べるものでさえなかったかもしれない。
しかし、そのちっぽけなものに縋りついていたからこそ、今日こうしていられる。
その小さくてちっぽけでつまらないプライドのために自分は強くなってきたのだから。
そして、それを教えてくれたのは紛れも無い目の前のこの打ち止めという掛け替えのない存在。
「やっぱりもう一発ぶん殴っておけばよかったぜ。お前のダンナになる野郎を」
瞬間、打ち止めの瞳が揺れる。
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