過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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449: ◆uQ8UYhhD6A[saga]
2011/02/07(月) 22:21:02.05 ID:K0zOCZ8xo



「こういう場合って、賭けはどうなんの?」

不意に背後から声が聞こえてきたので、御坂妹ははっとして声のした方を振り返る。
そこには、建物の上に足を組んで座っている垣根の姿があった。
一方通行によって血みどろにされたはずなのに、と思ったのも束の間、よくよく見れば垣根はきちんと血みどろになっていた。
だが、垣根はそんな怪我などまるで何でもないかのように淡々と言葉を続ける。

「お前の企みは失敗したが、その本質は達成された。これってお前の勝ち? それとも負け?」

「……そうですね。賭けは立ち消えということでどうでしょうか、とミサカは卑怯な提案をしてみます。
 流石にここで降参して、上位個体の居場所を教えるわけにはいきません。
 ですが彼が学園都市に残ることになった以上、あなたにもうこれ以上彼を狙うなと言うこともできません、とミサカは曖昧に言葉を濁します」

「そうだよなあ。まあ木原のおっさんは賭けに参加するつもりはなかったみてえだし、そうするとつまり賭けの参加者は俺とお前たちだけ。
 だから賭けの行方については、俺たちの合意で決めちまって良いよな?」

「どういう意味ですか? とミサカは訝しげな顔をします」

「お前の意見に賛成ってこと。賭けは立ち消え、よって現状維持。それでオッケー?」

血塗れの顔でにこりと笑った垣根を見て、御坂妹はきょとんとした顔をした。
まさか、ここまであっさりと交渉が成立してしまうとは思わなかったのだ。特に、彼はこのことに関しては非常に強く執着していたから。

「正直、意外です。もっとごねるかと思っていたのですが、とミサカはあなたに対する認識を改めます」

「だからお前は俺のことを何だと思ってるんだっつーの。仕方ねえだろ。俺もお前も、誰もこんなことになるなんて思いもしなかったんだ。
 だが、結局はそうなっちまった。だったら、もう互いに妥協するしかないだろうが」

「確かにそれはそうなのですが。……あなたは、これからどうするのですか、とミサカは尋ねます」

答えなんて、最初から分かり切っている癖に。
そう自問した御坂妹の心中を知ってか知らずか、垣根は一瞬の躊躇いもなくこう答えた。

「お前と同じさ、諦めねえよ。俺はアイツを取り戻す為なら、どんなことだってやってやる」

「……そうですか。では何も変わりませんね、とミサカは諦めの悪いあなたに辟易します」

「それはお互い様だろうが。ったく、自分のことを棚に上げやがって」

言いながら、垣根が立ち上がる。
その拍子にぼたぼたと何滴かの血雫が落ちたが、誰も気に留めなかった。

「ですが、これまでと同じ方法では何も取り戻せないと思いますよ。他の方法を考えなければ、とミサカは敵に塩を送ってみます」

「分かってるさ。だから帰って作戦会議かねえ、面倒くせえ。
 ま、お前らはせいぜいそれまでの間、ほんの少しだけ延長された余生を楽しめば良いさ。じゃな」

「ええ、作戦会議ができる限り長引くことを祈っていますよ。いっそのこと永遠に終わらなければいいのですが、とミサカはぼそりと呟きます」

御坂妹がそう言い切る前に、垣根は姿を消していた。
何処に行ってしまったのかは、分からない。
これからどうなってしまうのかも、さっぱり分からない。

ただ一つ確かなのは、彼らの戦いはまだ終わらないということだけだった。





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