2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 19:19:27.94 ID:IClwZiHj0
「どうも。お招き預かりまして光栄の至りです」
三十分程してやってきた古泉は玄関口で黒コートを脱ぎながら俺に笑いかけた。その両手にはコンビニで調達してきたものだろう、ビニール袋がぶら下がっている。
「悪いな、突然で」
「いいえ、滅相も有りません。貴方の要望で有ればそれは全てにおいて優先させて良いと、そう機関からも言われていますし」
「あんまり堅くなんなよ。只の暇潰しで呼んだだけだぜ?」
俺がそう言うと、古泉はいつもの顔で微笑んだ。畳んだコートを小脇に抱えて逆側の手に握っていたビニール袋を差し出す。
「構いませんよ。僕も年末年始は機関に行動を縛られっぱなしになる所でしたから。良い息抜きと、そう思わせて頂いても?」
「お前も大変だな。ああ、コートはその辺に掛けておいてくれ」
言いながら受け取った、袋の持ち手は思いの外ずっしりと俺の手のひらに食い込んだ。何が入っているのかと中を覗けば、未成年では購入出来ない筈の品々がこんにちは。
「アルコールは確かお嫌いではありませんでしたよね?」
超能力少年の笑顔に胡散臭さを拭えない俺がそこにいた。
「いや、嫌いじゃないが取り立てて好きでもないぞ?」
靴を脱ぐ古泉にスリッパを出しつつ、そう言ってみる。もしかして、コイツが呑みたいだけなんじゃないかとそう思わないでもない。
「そう言わないで下さい。折角買ってきたのですから。それに年の暮れ、明けには日本人ならお酒を嗜むものでしょう。厄払いだと、そう思って頂けませんか?」
「の割に袋の中身はビールとカクテルとしか俺の目には見えないんだけどな」
「日本酒がご希望でしたら届けさせますが?」
「そういう事を言ってるんじゃねえっつの」
古泉を先導するようにリビングへと向かう。俺に続いてドアを潜った古泉が後ろから声を掛けてきた。
「貴方とは趣味が合いそうに有りませんね」
聞こえる溜息。首だけで振り向くと超能力者は苦笑いを浮かべていた。
「いきなりなんだよ」
「ミスタードーナツと言えばゴールデンチョコレート一択だと、僕は思っていました」
ああ、そいつは分かり合えそうに無い。
641Res/518.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。