3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 19:20:14.40 ID:IClwZiHj0
「悪いな。フレンチクルーラこそ人類の至宝と教えられて育ったんだよ、俺は」
我が家では朝食にミスドが並ぶ事が極稀に有るが、その時は例外無くフレンチクルーラが八個用意されて一人二個と宣告されるハウスルールが設けられている。
このサクサク感を出すまでにどれだけの苦労が有ったのか、それを考えたならばフレンチクルーラ以外を選ぶのは最早ミスドへの冒涜と言えないだろうか?
「分かっていませんね。ゴルチョコ……失礼、ゴールデンチョコレートに辿り着くまでの歴史をご存知であればこのような愚かしい選択は有り得なかったと言うのに。無知とは、これは罪でしかないという事でしょうか」
古泉は首を振る。俺たちが互いに譲り合えない信念を持ち併せている事はその悲痛な物言いから理解出来た。そして、もう一つ理解出来た事が有る。
「古泉、ミスドのポイントカードは好きか?」
「僕の財布には二枚しかカードは入っていません。クレジットカードと……そしてミスタードーナツのポイントカードです」
すっ、と古泉が手を差し出す。俺はそれを無言で握り締めた。
ミスドを慕う男がここに二人居る。男が甘党で何が悪い。俺たちの間に言葉は、要らなかった。
「ところで、今日はどういった風の吹き回しですか?」
古泉がテーブル上のゴールデンチョコレートに手を伸ばしながら聞いてくる。どういった……? いや、質問の対象が曖昧で抽象的だな。返答に困る。
「いえ、平生(ヘイゼイ)であれば僕が、それも一人で貴方の家に招かれる事など無いような気がしましてね。ちょっとした好奇心です。お気を悪くなさらないで下さい」
「気紛れだよ、気紛れ」
「そうですか。ふむ、深い追求は止すべきでしょうね。折角のアルコールが不味くなっては興醒めですし。それに僕としてはこのように暇潰しの相手に選んで頂けた事は嬉しいのですよ。例えそれが、国木田君、谷口君に次ぐ優先順位であったとしても……ええ」
うげ。なんでコイツ、そんな事を知っていやがる。盗聴か? 盗聴してやがったのか?
「機関ってヤツはどこにでも居る一介の男子高校生の電話の中身を詮索するのが仕事なのか? 羨ましいこったな」
「そう、皮肉を仰らないで下さい」
「誰だって自分にプライバシーが無い事を知ったら皮肉の一つだって言いたくなるっつーの。トゥルーマンショウじゃねえんだぞ?」
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