27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 20:32:54.48 ID:IClwZiHj0
「カッターナイフ? の刃?」
「ええ。ほら、一応僕って機関の構成員と学生っていう二束の草鞋な訳じゃないですか。となるといざという時に武器に出来そうで持っていられる物は筆記用具関係しかないんですよ」
なるほどなるほど。つまり、コイツは常在戦場って感じなのか。不味いな。そんなの知っちまったら迂闊にからかう事すら出来ねえじゃねえか。あー、知らなきゃ良かった。
「一応、拳銃なんかも持っていますけどね。音が五月蝿いですし、サイレンサを取り付けるのも手間ですからどうもこういった文房具で済ませてしまう……癖のようなものですね。悪癖です」
おおい!? 文房具で戦うのが癖になっちまうって一体日頃お前はどんな殺伐とした生活を送ってるんだ、古泉!?
「イリア姉さまと私の間を、貴方は邪魔をするの? お父さまのように? お母さまのように?」
「ええ。申し訳ありませんが、ここで僕に出会ってしまった以上、赤神オデットさん。貴女の道は行き止まりです。赤神家では既に貴女は死んでしまった事になっているので、持ち帰るのもそれはそれで火種、でしょう?」
古泉が右手を、左手を交互に手首のスナップを利かせて振る。それに併せて左右に飛び回る純白の美女。ぼけっと見ている俺はまるでソイツがダンスでも踊っているように錯覚してしまう。指揮者が古泉で。
「ふむ、なるほど。赤神の鬼子と、かつて呼ばれたその異才……異彩は健在ですか。飛び道具のあしらいはお手の物ですね」
落ち着き払った声で古泉が言う。手のひらからカッターナイフが無くなったのを俺が視認したのと同時に、美女が超能力者向けて駆け出した。
「邪魔ですわ、貴方」
「おやおや、嫌われたものですね」
レイピアの先が直線距離、矢のような速度で古泉に迫る。
「ですが、僕もどちらかというと飛び道具は苦手でして」
言うが早いか古泉の姿が消えた。目に見えて動揺したのは赤神オデットだ。しかし、突進は止まらない。そのスピードは、矢に例えて遜色無いその加速は最初からブレーキングを考えられている速度ではない。
「消え!?」
「消えてません、よっ!」
古泉の右足がコンパスを使って書いたような綺麗な弧を描く。狙いは……足首。消えたように見えたのは、眼にも留まらぬ速さでその長身を縮めたのか!
必殺のタイミングと思われたその刈り足は、しかし宙を切った。
「あのタイミングで跳びますか!?」
少年が驚愕の声を上げる。その頭上を飛び越える美女。しかし、空中で何かに当たったようにその体が背後に引っ張られる。ウェディングドレスの、その先を握っているのは超能力者!
そして、それがラスト。
「チェックメイト」
地面に無様に尻餅を着いた美女のその左腕を踏み付けて古泉は、その顔の中心にどこから取り出したのかピストルの銃口を突きつける。
「ウェデイングドレス。戦闘に出向くものの服装ではありませんでしたね。最近のプレーヤはいけません。戦場はファッションショーではないのですよ」
ゴキリ、何かが折れる音。赤神オデットが痛苦の声を挙げる。剣を握っていた女の左手を少年は踏み付けるままに折り壊していた。
「古泉、やり過ぎだ!」
「何がですか?」
副団長はこちらを向いて笑った。まるでいつも通りの似非スマイルも、拳銃を構えているその姿には全然似合ってない。それは……男子高校生とは、俺にはとてもじゃないが見えやしない。
ってのに。
古泉の手の中から、パンというやけに軽い、軽くけれど響く破裂音が聞こえたのはその直後だった。
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