過去ログ - キョン「戯言だけどな」
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36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/19(水) 21:05:44.66 ID:IClwZiHj0
「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら!」

ようやく目を開けた時、一番に視界に飛び込んできたのは地面に倒れ込んだ古泉の姿だった。

「古泉!!」

叫んで、しかし駆け寄っても朝比奈さんを負ぶっている状況では咄嗟に手を差し出す事すら出来やしない。何が起こったのかといーさんの方を見れば、いーさんは立ち尽くしていた。いや、立ち竦んでいた。
その向こうには夜の中にあっても輝くような橙色の髪を注連縄の様にぶっとい三つ編みにしたツインテール。アイツが古泉をやったってのか?
音も無く!?

「喧嘩しにきたぞ――友達」

挑発的にそう言って。すっくと立ち上がる。身長は古泉と同じくらいか? 男にも女にも見えるが、それよりなにより「人類最強」によく似ていると。俺はなぜだかそんな印象を受けた。

「……真心」

いーさんが呟く。苦々しく、痛々しい響きを伴って。

「おう、いーちゃん。久し振りだな」

「喧嘩しにきた、ってどういう事だい?」

「ああん? 決まってんじゃね? 俺様気付いちゃったんだよな。まだ戦ってない相手が居るってさ。いっちばん拳を交えるべき相手とまだ戦(ヤ)ってねえよな、って。そこにタイミング良く請負仕事が入っちまったら、これはもう運命だろ、ウンメー」

とりあえずは以前意識の戻らない朝比奈さんを壁に寄り掛かるように座らせて(すいません、朝比奈さん)、古泉の様子を窺う。口元に手を当てて呼吸は……とりあえず息はしてるな。辛そうな感じもない。
古泉のコートにも裂けた感じはない事から外傷もどうやら無さそうだ。

「人類最終ばーさす人類最弱。今までずっと有りそうで無かった対戦カードだろ。げらげらげらげら!」

人類最終。オレンジ髪のツインテールはそういう二つ名なのだろう。人類最弱ってのがいーさんを指すのは何度か聞いたし多分間違いあるまい。だが。問題はそこじゃない……よな。
人類最弱ってのはいっちばん弱いってこったろ。人類最終ってのがどれだけ強いのかなんてのは知らないが、しかし最弱よりも弱かったらそれはそれで問題有りだと俺は思う。そんなんなっちまったらいーさんは看板の付け替えが必要だ。
「弱い」とは「勝てない」ってそういう意味だ。喧嘩であれ、なんであれ。勿論、この俺に古泉を音も無く昏倒させたような化け物を相手に出来るような度量もスキルも有りはしない。
あれ? 詰んだんじゃねえの、この状況?

「真心、君、本気で言ってる? 君とぼくが本気で戦ったら無事じゃ済まないよ?」

「そりゃあ、いーちゃんは無事じゃ済まねえだろうけどよ。俺様だって別に無事で済む気もねーし、むしろいーちゃんがそこまで善戦してくれたら俺様にしてみりゃそっちの方が面白いからどんどんやれっての」

「そっか。それじゃ、もう一つ。君、何しに来たの?」

「喧嘩」

「いや、そうじゃなくて。質問が悪かったかな。誰に頼まれて来たの?」

「そんなん俺様に仕事をさせられるって言ったら人数は限られてくるだろ。いーちゃんなら大体察しは付いてんじゃねーの?」

「ふーん。なるほどね。そっか。分かった。なら、戦(ヤ)ろう。ぼくは今日中にもう三人ほど相手にしなくちゃいけないみたいなんだ。残念だけどね、君に時間を割いてはいられないんだよ」

いーさんは、人類最弱は平然と宣戦布告を口にする。俺にはその発言が自殺志願にしか聞こえない。けれど。
何も言えないのは、いーさんが自信たっぷりにそれを口にするから。戯言遣いの言葉は、なぜだか信じてしまいたくなる不思議な力に溢れていて。俺はそこに賭けてみたくなる。

「余裕じゃねーか、いーちゃん。綽々じゃねーか、いーちゃん。だがな、始まった途端に『参った』なんて戯言遣っても、それこそ許さねーかんな俺様は」

「分かってるよ。君を退屈させたりはしない。友達だからね」

「げらげらげらげら! 戯言だな、いーちゃん」

「ああ、そうさ。だけど君の存在も大概戯言だよね。考えてもみなよ。ぼくが、この無力にして卑劣な戯言遣いが人類最悪を相手にするって言うのに友達に助力を請わないと思うかい?」


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