53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/01/20(木) 01:31:45.93 ID:l1nLUIO70
「なんだ、そりゃ。『盗む』って付けばなんだって有りかよ、大泥棒ってのは?」
そんなん手の付けようがないだろう。こっちが何をしても一見で「盗み見」して、全く同じもので逆襲されるんだろ?
それに「盗む」って言葉がどんだけ汎用性高いと思ってやがる。腕を盗むやら眼を盗むやら、俺でさえちょっと頭を捻っただけで四つや五つ慣用句が浮かぶ始末だ。
オールマイティな単語だよなあ。
「それが出来るから石丸小唄は『大泥棒』なんだろうさ。彼女が戦う所はそう滅多に見れないけれど、自称『哀川潤に並び立つ存在』っていうのは誇張じゃないと思い知らされる次第」
殆ど手詰まりみたいな事を口走りながらも、しかし戯言遣いは決して焦燥しちゃいなかった。どうしてだろうか。想影さんへの信頼? そう言や友達って言っていたしそういう事も有るかも知れん。だが、それだけでは無いような気が、漠然とした。
「やるじゃん、小唄」
「思っていたよりも楽勝そうですわね、真心の相手は。十全ですわ」
「げらげら! そんな事言ってられんのは今だけだっつーの!」
吼えて、想影真心の姿が消える。今度はどこかから現れるという事も無い。路地裏から全く、存在を消した、そんな言葉がしっくりと当て嵌まる。
「……今度は闇口の『隠身』ですか。多芸ですわね」
「見えてたら盗まれるってんなら、見えなくなりゃいいだけの事だろ。なあ、小唄。見えないものは、盗めないだろ?」
どこからかオレンジ色の声が聞こえるも、それがどの方向からだって聞かれたら俺には答えられない。反響してやがる訳でもないだろうが、しかし、それはつまり「隠身」とやらが音の発生源までカバーしてるって事なんだろう。
「愛し子(ディアチャイルド)。成長しましたね」
「褒めるなよ、気色悪い」
「ですが……まだまだですわ」
呟いた石丸小唄の姿は俺の視界の中でゆっくりと、息を吐く。そして、眼を閉じた。
「泥棒相手にかくれんぼなど相手が悪いと言うものです。そして私は大泥棒」
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