過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」
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934: ◆d85emWeMgI[saga]
2011/03/10(木) 21:38:14.36 ID:URvLCU7D0


慣れた手付きでざく切りにしたキャベツ、モヤシ、タマネギ、ピーマンをフライパンに放り込み手首のスナップを利かせて炒めていく。
薄っすらと額に汗を浮かべ、最近少し伸びてきた髪をタオルをバンダナ代わりにして、リズミカルに具材をかき混ぜながら浜面は鼻歌を歌う。
麺を投入し、ビールのプルタブを開けると麺が解れる程度に注いでやる。
具と麺が混ざるように勢い良く、けれども具が零れてしまわないように注意を払いながらかき混ぜていく。
ソースを絡めて、万遍無く麺にソースが絡むのようにスナップを利かせていく。焼きそばをきっちりと作ろうと思うとどうしても結構な力を作業に要する。
火を弱めて、息を吐くと先ほどプルタブを開けたビールをくぴりと一口飲む。
昼間からのビールとはそれだけで贅沢な気分になれる。普段ではまずあり得ない時間帯に酒を飲む、その事への誰に対してなのかわからぬ罪悪感が少々。
それが贅沢をしているような気持ちに拍車をかけるのだ。
二人分にしても随分と作りすぎてしまった。もし余ったら晩飯にすれば良いだけだからそれも良いだろう。
浜面は大皿に盛ると、リビングに向かう。
丁度一方通行が自分の部屋から戻ってきたらしく、彼もまた持参した皿をテーブルに乗せていた。
焼きそばの皿を乗せると、細かな傷が目に付く。ウォールナットのテーブルは使い込まれた年月を感じさせる。
そろそろ新しいのを買い換えようと申し出ても頑として譲らない。
家族の思い出が染み付いたテーブルは妻のお気に入りの一つだ。
薄っすらと残るマジックの跡は、幼い息子が落書きをしたのを、必死の思いで消した跡である。
それすらも妻にとっては大切な思い出の一つであり、愛妻家の浜面はそんな少女のような妻を可愛らしいと思う。

「焼きそばにビールか。悪くねェチョイスじゃねェか」

既に並べてあった四本の缶ビールに小さく口笛を吹くと、一方通行は浜面の対面、カーペットに直に座る。
浜面の鼻腔を一方通行の用意した料理から立ち上る芳ばしい香りが擽る。

「何作ってきたんだ?」
「ピラフ。昨日夕飯に作ったスズキが結構余ってたからな」

ワインばかり飲んで早々に酔いつぶれた絹旗のせいで、多目に作っておいたスズキが余ってしまった。
最もそれはわざわざ話すことでもないと、一方通行は結論だけを口にする。
ほこほことした湯気と食欲を煽る匂いに唾を呑み込む。
焼きそばとピラフという組み合わせに若干奇妙な感じもするが、チャーハンみたいなものだと思えば問題は無い。
相変わらず横文字系の料理ばかり作るなと、浜面は半ば憧憬の念を視線に込める。


「お洒落だな〜〜俺は焼きそばとかラーメンとかチャーハンとか、そんなんばっかりだぜ」

横文字の料理と言えば、ハンバーグやオムレツ、カレーといった子供も大好きな定番料理ばかりだ。
理后は基本的に和食が多いし、浜面は基本男の手料理の見本のようなものしか作れない。
ざく切りにした野菜を油で炒めるというのが浜面にとっての料理のすべてであり、一人暮らしの大学生の自炊レベルと言ってしまえばそこまでである。
ゆえに、浜面家の食卓に洋食は縁遠い。

「ぶっちゃけた話をすりゃ中華みてェなのは腕が疲れるンだよ。家庭のキッチンじゃ火力も足りねェ、中華鍋は万能だが、使いこなすことが出来るのが前提だしな」

ちらりと浜面は一方通行の細腕に視線を落とす。
確かに、轟々と勢い良く炎を上げるキッチンで中華鍋を振るう一方通行の姿は想像しづらい。




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