過去ログ - 一方通行「いい子にしてたかァ?」
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949:彼女がぱっつんになった理由[saga]
2011/03/10(木) 21:57:03.76 ID:URvLCU7D0


「……あーくん、かえっちゃいや…」


涙でべとべとに濡れた頬は、ずっと毛布に包まって熱かったせいか、林檎のように赤く染まっている。


「おおォ、そンな所にいたのかァ」


わざとらしさ此処に極まれりとばかりに、大仰に驚いた顔をする。
一方通行と目が合うと、想はハッとして慌てて毛布をかぶる。
みっともなくなった前髪を見られたくないという、幼いながらも女の子としての恥じらいに、微笑ましさを覚える。


「想、ちゃンと顔見せてくれよ。笑ったりなンかしねェって。それによ、コイツもスッゲー反省してンだ。いい加減許してやれ、な?」
「想ちゃん、ゴメンね。お願いだからママにもお顔見せて?」

沈黙がリビングに染み渡る。それは時間にして僅かなものだっただろう。
それが美琴には無性に長く思えた。
やがて、毛布がするりと肌蹴、少し膨れた愛らしい顔が現れる。
大好きな二人からのお願いを拒絶してまで張り通す頑なさはこの少女には無かった。
想の前髪を一方通行はさりげなく見てから「何だ」と拍子抜けした。
普段の前髪に比べれば確かにずっと短いものの、思っていたよりも全然おかしくはなかったのだ。
おそらく、想は前髪が変になったことに怒ったのではなく、今までの自分と違う姿に戸惑ったのだ。
それが、美琴の顔色を見て、変だと解釈してしまったのだろう。

「なンだ、全然おかしくねェじゃねェか」

「んん、ふゆ…」

「……なァ、想」


想の頬を指先で擽ってやる。
ひんやりとした一方通行の指が火照った頬に心地良いのか、嬉しそうな顔をする想。

「ママもな、お前が喜ぶと思ってやったことなンだ。確かに気に入らなかったかもしれねェが、忙しい中何とかお前が喜ぶ面を見たかっただけなンだ。
 それを嫌いなンて言ってやるな。お前だってママが喜ぶって思って手伝ったりすンだろ?それが失敗しちまっても、嫌いなンて言われたらお前だったら…どうだ?」

「………かなしい……」

「だろう?」


こくんと、小さく頷く優しく、賢い少女の頭を撫でてやる。
一方通行は滅多に見せない、というよりも他の人間にはまずは見せることの無い柔らかい笑みを浮かべる。
美琴がそろそろと想に近づく。そっと伸ばした美琴の手を、想の小さな手が掴む。


「ママ……ごめんね?」

「想ちゃん………ママこそゴメンね」


ぎゅっと、美琴は想を抱き寄せる。
母親を傷付けた事への罪悪感と、ずっと今日一日を甘えられなかった分が相まって想も必死にしがみ付くように抱きつく。
母娘の仲直りを見届けた一方通行はシザーを手に取る。
ビニルシートに腰掛ける。



「さてと……想、コッチ来い」

「なぁに?あーくん?」


にやりと、一方通行は笑う。







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