過去ログ - 兄「お兄ちゃん大好き……(裏声)」
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193:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)[sage saga]
2011/05/17(火) 04:15:13.22 ID:IIUhSz4Yo
〜幕間劇(まくあいげき)、ある日の妹〜
兄「完全に、読者を置いてくつもりだな。この作者」
と言う訳で、番外編の中でもさらに番外編、みたいな話。
ある日の事。
学校帰りの彼女は、兄の部屋の前で足を止めた。
もう三日も兄は帰宅していない。
「お兄ちゃん……」
隣に住む兄と同い年の幼馴染が言うには、元気らしい。
それでも心配な事に変わりない。
例え、兄との関係酷く疎遠な物になりつつあったとしてもだ。
霞み始めた過去の記憶では、仲が良かったはずなのに。
いつの間にか両親と同様に兄を嫌悪している。
確かにおかしな言動は目立つが、それを彼女は嫌ってはいなかった。
むしろ、彼女の本心は兄を好んでいる。
実体のない嫌悪感だけを、両親に刷り込まれたとも言える。
彼女はそれを自覚していない。
いかなる心情からか、彼女は兄の部屋へと踏み入った。
物自体が少ない為に小ざっぱりとしている。
兄が家を出た日に破壊された窓ガラスはそのままだ。
ポリエステルのカーテンを画鋲で止めて、雨を防ぐ処置だけしてある。
この季節では、まだ少し肌寒い。
彼女は二の腕をさすりながら、ベッドへ腰かけた。
兄の事を考える。
兄はこの家で、何を思っていたのか。
自分がその立場に立って。
考え方や嗜好が他人と著しくかけ離れていたら。
家族と何一つ、感情の共有が出来なければ。
それは、彼女を酷く寂しい気持ちにさせた。
「朝っ! 俺とお前の朝っ!! 息子は元気かっ!? おーけー、れつごー!! やぁー!」
突然上がった兄の声に、妹は飛び上がった。
驚きは一瞬で、同じ台詞が再び聞こえた時には、彼女はその正体を悟った。
兄が使っていた録音機能の付いた目覚まし時計だ。
相変わらずの意味不明な台詞。
「さすがお兄ちゃん……頭が悪い……馬鹿の中の馬鹿の中から選び抜かれた馬鹿」
しかし、どうしてこんな時間にと、彼女は時計を手に取った。
秒針が不規則を奏でていた。
電池が切れかかっているらしい。
それはやはり、彼女に寂しさを与えた。
「……電池の代えはあったと思う」
また変な時間に鳴っても迷惑だし、と彼女は自身に言い訳をして、乾電池を取りに向かった。
おわり。
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