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376:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/26(日) 20:53:11.18 ID:w/0NnnoFo

 彼の求めに応じて、琴音は変わった。
 短めの髪を長く伸ばした。眼鏡からコンタクトにして、それから初めてそれを金色に染めた。ピアスの穴もついでに。
 健二のためにいっぱいいっぱいおしゃれした。
 彼が自分をもっともっと好きになってくれるように、たくさんたくさん努力した。
 琴音は変わって、変わって、変わって。

 父と母が琴音を叱る。
 一緒に食事をとらなくなったこと、付き合う友人が良くないこと、何より琴音が変わったこと。
 琴音はそれを聞き流す。携帯を片手に軽くあしらう。
 経験が大事なんて言ったのは誰だったっけ。わたしはあなたたちの知らないことをいっぱい知っている。
 ぶたれてひりつく頬を押さえながら、そういえば今日はピアノの日だったなと思い出す。
 けれど今更楽譜や鍵盤に向き合いたいとは思わない。あんなものは楽しくない。
 それでも。
 それでも、先生とはお話がしたい。今の自分のこととか、先生の昔はどうだったとか。
 先生が優しく微笑む顔が懐かしい。

 健二からのメールが減る。会える時間はさらに減る。
 何でも言うことを聞いてきた。それでも現実は優しくない。
 健二には他に女がいるらしいと友達に聞いた。
 けれども、まだ、好きだ。

 健二に呼ばれてボロアパートを訪ねた。
 ドアの向こうから下品な笑い声が聞こえる。開けて入ると、健二のほかに男が数人いる。琴音を見て、笑い声がさらに高まった。
 健二とはいろんなセックスをしたけれど。乱交なんて初めてだった。
 琴音を置いて、彼は部屋を出ていく。自分は『レンタル』されたらしい。
 これからもされるらしい。



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