309: ◆XtjOmDyc46[saga]
2011/05/31(火) 19:01:28.80 ID:RaCc1kI5o
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「ふむ……急患と言うから何事かと思えば」
手術衣を着た、カエルによく似た顔の医師がぼやくように呟いた。
「大怪我を負った双子ってのは珍しいね?」
手術室の前、待合場所のような小スペースに、収まっている美琴にそう声をかける。
「……先生」
「心配するな、妹さんの命は必ず助ける」
カエル顔の医師の言葉に、美琴は小さく息を吐く。
緊張していた身体から力が抜け、その場にへたりこんでしまった。
「………まだ、落ちつくには早いわよ、美琴」
それでも、美琴は自分の両頬を二度叩くと、気を入れ替えたように立ち上がる。
手術を受けることになる妹の事も確かに心配だ。
悲劇のヒロインを演じるならば、ここでミサカ9982号の手術を見守るのもアリだろう。
だがそれで、救えるはずのもう一つの命を放り出すわけにはいかない。
一方通行との、自分と妹の問題である中心点に放り出してきた馬鹿なお人好しを迎えに行かなくてはならない。
心のモヤモヤを絞り出すようにして、大きく息を吐きだす。
冷たい床から立ち上がり、ミサカ9982号の眠っているであろう手術室のドアに背を向ける。
「君たちが何に巻きこまれてるかは聞かないよ? でも、子供があまり危ない場所に突っ込むのは感心しないね」
背中越しに、カエル医師の言葉が飛んだ。
身体を半分だけそちらに向ける。
酷く真剣な顔をした医師がそこにいた。
情けやちょっとした心配で浮かべているそれとは違う、真摯に子供を思うような顔だった。
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