33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/02/17(木) 20:46:57.63 ID:rSTy2L/Wo
完全下校時刻。
学生しかいない学園都市において、学生の夜遊び防止のために決められたそれは、ある意味で学園都市全体が眠る時間だ。
通学バスは勿論、公共交通機関は殆どその時間を終電としており、それを逃せば実質帰れなくなる、というわけだ。
そんな夏の暑さが消えない夕刻の通りを、上条はトボトボと歩いている。
結局、すけすけ見る見るを攻略できなかった上条は完全下校時間までしっかりと拘束されたのだ。
それ故、寮の方に帰るバスもなく、徒歩での帰宅を余儀なくされている。
「あっちぃ……」
日中のうだるような暑さとまではいかないものの、ギラギラと輝く夕日は『まだまだイケるぜ』と言わんばかりに熱を放っている。
風でも吹いてくれれば少しはマシになるというものなのだが、残念なことにそよ風さえ吹く様子はない。
風力発電の風車はピッタリと制止したままだ。
周りを行く恐らく同じ補習組であろう学生達も、各々不満そうな顔を浮かべている。
元気に走り回っているのは警備ロボットや清掃ロボット達のみ。
「さっさと帰り………あれ?」
ふと、視線を向けた先。
何故かスーパーの店先に並んでいるガチャガチャの群れ。
上条の視線はそのすぐ前で固定される。
気になるアイテムがあったわけではなければ、落ちている百円玉を見つけたわけでもない。
「み、御坂?」
危うく持っていた鞄を落としそうになるくらい衝撃を受けた。
手に入れた戦利品を見ている美琴は、にんまりと表情を崩している。
「な、何やってんだアイツ………」
常盤台のお嬢様がスーパー前でガチャガチャをやっているなんていう光景は、不思議というレベルの話ではない。
外国の要人がコンビニに買い物に来るようなものだ。
明らかに周囲の注目を集めているが、美琴本人は気づいていない。
このままスルーして何も見なかったことにしてしまうか、溢れる親切心であの視線を浴びているお嬢様に助け船を出すか。
(しかし、あそこに突入すればもれなく俺も珍百景に認定されちまうのかっ!?)
ぐぬぬ、と下唇を噛む。
もし今、『おーい、御坂!』と突入していけば、注目の的は『ガチャガチャをやるお嬢様』から『お嬢様に馴れ馴れしい馬の骨』に切り替わるだろう。
それだけならともかく、いきなりナンパしてんじゃねぇよとギャラリーに言われかねない。
「御坂には悪いが、ここは気付かれる前に退散することにしますの……」
どこぞの風紀委員のような口調で、上条は踵を返す。
浮かんでくる不自然な笑みを隠しきれないまま、第一歩を踏み出した時だった。
「おーっす、こんなところで奇遇ね」
「だぁぁぁぁああああ!?」
美琴からの声かけ。
上条にとっては正にまさかの出来事であった。
それにより、不思議少女美琴ちゃんからの逃亡作戦は全くの水の泡へと化す。
「何やってんの……って、アンタ、なんでそんな落ち込んでんのよ?」
「いや、何でもありませんことよ?」
がっくしと、明らかに肩を落としている上条に美琴は怪訝そうな表情を作る。
いつの間にか隣までやってきてしまった彼女に、上条は嬉しいやら悲しいやらなんだか複雑な表情を作るしかない。
『お嬢様に馴れ馴れしい馬の骨』どころか、『お嬢様に声をかけられて、駆け寄られるくらいのヤツ』に成長進化してしまったことに愕然としつつ、彼は口癖の言葉を慌てて飲み込んだ。
(ここで、不幸だ、なんて言ったらまたビリビリコースだよな……)
上条としては早く帰りたいところではあるが、あんまり刺激してはビリビリ付き追いかけっこ。
最近になってようやくほどほどの関係を築いたというのに、そうなってしまっては元も子もない。
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