9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/02/20(日) 10:10:34.74 ID:6WyUR0M10
和の頭の中でその言葉が、狭い箱に投げ入れたテニスボールのようにガンガン反響した。
和は食い入るように画面を見つめながら、頭の中ではその一言だけが風船みたいに膨張して、音楽の他の部分が入って来なくなってしまう。
何もない、何もない―――唯のいない毎日には何もない。今の自分がこの一言の中に生きていた。いや、何もできず無為に過ごしている自分は死んでいるようなものか。
そして、唯の笑顔が見れればいい、唯の笑顔を見るだけでそんな憂鬱さから抜け出せる、ああ、この一言は私そのものだ。
和は、自分の生を曲の中に求めるように、狂った腕時計みたいに同じ曲を何度も再生し、同じ部分を何度も聴き入った。
その一節が耳に届く度に、和は何とも言えない迫ってくるような切なさに襲われ、
その歌詞を頭の中で繰り返しながら、自分の虚しさや唯と会えなくなることを思い、ぐるぐると重くなるわだかまりに飲み込まれていった。
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