過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/06/19(日) 05:22:01.19 ID:+MSrUYl7o
 現在、この国には三つの勢力があり、それらが歪なみつどもえを構成している。二分された
『東京』と、かつて『神奈川』と呼ばれた所に、彼らはそれぞれの思惑と信念、そして意地を
抱いて立ち、対峙している。

 ことの起こりを『始まりの研究所』が建てられた半世紀前とする向きもあるが、しかしこの、
『学園都市』の根幹を成すとされる施設は、これまで一度もその実在が証明されたことがなく、
また当時の資料の殆どが散逸している現状から、関連するかも知れない事象の一つとして考慮
するに留めておかれたい。

 我々にとって周知の事実である『大隆起現象』が、今日の混沌の元凶であると、断を下すに
は早計に過ぎるのは確かだが、少なくとも契機の一つであることに異を挟む者もまた、いない
だろう。

 二十九年前。神奈川県・横浜市を中心とした半径三〇キロの地域が、原因不明の大隆起現象
によって本土と断絶する事態が発生する。この大災害により、近接する首都圏の機能は喪失し、
回復までには実に五年の時を要することとなる。

 この時期に優先順位から外れ、結果的に放置された地域が『ロストグラウンド』と呼ばれる
ようになった神奈川であり、そして『学園都市』と称されるようになった、西東京である。
 交通や通信などの情報網が全て失われた『ロストグラウンド』とは異なり、西東京はその被
災規模こそ甚大なれど、住民の避難・疎開はそれなりに順調に行われた。問題は、その後のイ
ンフラの復旧が後回しにされ続けたことにある。
 政治と経済、この中枢が麻痺し続けることを何より恐れた時の政府は、神奈川県として残っ
た一部の地域と、これに隣接する東京都西部を、二次災害の危険が高いという理由で全面退去
地区として指定し、この土地に投入されるはずだった物的・人的資源を首都機能の回復に振り
向けたのだ。

 こうして住人と土地としての価値を失った西東京に目をつけ、政府に接触を謀ったのが現・
学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリーである。彼は文科省の強い後押しを背景に、
なおざりにされていた教育機関の一極集中による劇的復興という名目で、東京西部地区を中心
とした半径十五キロ、東京都全体の三分の一に及ぶ土地の取得・利用許可を受け、更には基礎
インフラの整備を自前で行うことを条件に、警察権をも含む自治権限を約束される。
 政府としては、復興の目処も立たない土地を全くの無償で、それも国民の反発を極力招かな
い形で再開発してくれるという申し出に、飛びつかない理由など考えられなかったのだ。

 五年の時が流れ、曲がりなりにも利用可能となった政治と経済の目が、放置されていた未開
の地へと向けられる。幾らかの後ろめたさと共に援助という名の資本が大量に投下され、驚異
的な勢いで『ロストグラウンド』に市街地が形成されることになる。

 この時点では、西東京の再開発は目に見える形での成果を上げていない。これはいまにして
みれば、非常に巧妙で精緻な計画に基づいた演出であったと判るのだが、そのことに気づいた
者は、一人もいなかった。

 そして三年後、大隆起現象から八年の時を経て、『ロストグラウンド』は連(むらじ)経済
特別区域として日本で『唯一の』完全独立自治領に指定される。が、しかしこの経緯はいま以
て不鮮明なままである。同時期に発見された『アルター能力者』の存在、本土側の経済力低下
による復興資金の捻出のため、旧横浜地域の華僑による資金援助の条件、等々、様々な説があ
るが、このいささか不自然な独立自治領の誕生に至る理由としては、それらの総てを併せても
まだ弱いのだ。


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