過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/06/19(日) 05:23:16.16 ID:+MSrUYl7o
『アルター能力』については判明していない点が多い。いわゆる『超能力』の存在が科学的
に証明された現在に於いても、我々がその力について知り得る情報は乏しい。
ネット上の動画サイトを訪れれば必ずと言っていい程、一人の『アルター能力者』とされる
男の姿を捉えた映像を見ることはできる。これは七年前の『再隆起現象』の直前にTVで放送
されたものであり、その過激な内容から、未だ捏造の噂の絶えない代物ではあるが、ほぼ唯一
の実録映像として、一定の価値はあるものと考えられる。
映像の中で『アルター能力者』――である、とここでは仮定する――が引き起こした破壊は
通常の兵器のそれを優に上回っており、これを一個の人間が思うままに行使するという状況は、
全くの脅威であり、にわかには信じがたい。
だが、連経済特区の誕生から五年後に『アルター能力者』と武装警察組織である『HOLD』
の間に生じた内戦状態は、子細な情報こそ秘匿されているものの、事実として公表されており、
すなわちこれは、彼らの能力は武装した警察組織に匹敵していたという、まぎれもない証左で
ある。
そしてこの事件により、『ロストグラウンド』は『市街』と『荒野』を壁によって物理的に
隔絶し、加えて衛星による監視、渡航の制限、地域限定通貨の発行と、『ロストグラウンド』
そのものを含めた、二重の囲いを形成するに至る。
さて、『ロストグラウンド』に政府と国民の目が注がれている間に、『学園都市』は長年に
及んだ基礎の整備を完了させていた。もちろん、水面下で行われた強引な土地取得や、工期の
遅れに対する批判の声は小さく、目立たなかった。
そして彼らの『二〇年進んだ技術』が本領を発揮し始めたのが、この頃である。翳りを見せ
始めた連経済特区の話題を肩代わりするように、教育施設の落成を祝うニュースがメディアを
立て続けに賑わすようになる。
助成金に頼らない償還不要の奨学金制度は、政府と国民の圧倒的な支持を受け、都市部での
生活を夢見る全国の若き学生たちは、近未来都市に立ち並ぶ学生寮への入居権を目指して勉学
に励み、出生率が少し上がった。
大隆起から九年、現在から二〇年前に、『学園都市』はその歴史を――公式に――開始した。
最高水準の教育を実現するために、惜し気もなく注ぎ込まれた人材と技術は、質の良い後進を
育て、彼らのための専門的な研究機関も必要な時期に必要なだけ、開設された。
そして二年の後、『学園都市』は『超能力』の開発に成功する。
詳細を伏せつつも劇的に公表されたその事実は、全国の中二病患者の熱狂と、少数の識者に
よる懸念を含め、概ね好意的な驚愕をもって受け入れられた。先に『アルター能力』、つまり
起因も制御も不明な謎の力が実在するという、不安の種が播かれていたのが功を奏した格好で
ある。
この絶妙とも言える二つの能力開花の共時性について、アレイスター=クロウリーがこれを
予見または関与していた、という証拠は存在しない。
ともあれ、これによって『学園都市』の方向性は、大きく――おそらくは目論見通りに――
変化し、決定したことになる。科学によって解明され、再現可能な技術として確立し、安全に
制御が可能であり、そして『いずれあるかも知れない未知の脅威』に対抗しうる力を開発する
機関として、了承し承諾されたのだ。
以降の『学園都市』の発展は、我々のよく知る通りである。機密保持を理由に建てられた厚
く巨大な外壁は双方にとって有益であると歓迎され、『超能力』開発機関と変貌した各校への
入学希望者の数は衰えることがない。超能力開発の副産物として外部にもたらされた最先端の
科学技術はこの国の経済に活気を与え、人々は災害からの復興を確信するに至った。
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