過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/06/19(日) 05:24:38.16 ID:+MSrUYl7o
対照的に混迷と衰退の度合いを強めたのが、連経済特区である。内戦の終結から三年、癒え
かけた疵を抉るような事件が発生する。夷狄を障壁によって隔離し、安全が保証されたはずの
『市街』がアルター犯罪の舞台となり、再度、壊滅状態に陥ったのだ。
事件の容疑者すら判明しないまま、復興のやり直しを余儀なくされた市民たちの不安は頂点
に達し、政府はここに一つの決断を下す。特殊任務用部隊『HOLY』の設立である。
隊員の総てがアルター能力者で構成されたこの部隊は、武装警察組織『HOLD』の中にあっ
て上位に位置し、全体への指揮権と独自の人事権を与えられた。
『HOLY』は設立直後から目覚ましい実績を上げる。市街はもとより、その周辺部に於け
るアルター犯罪はわずか数カ月で撲滅され、やがて彼らは統制の手を『荒野』全域に広げる。
アルター犯罪者の保護、更正の名目で行われる『アルター狩り』には人道上の問題があると
いう指摘もされたが、かつての被害を知る者たちによる肯定の声の数と大きさに、それは無視
された。
『大隆起現象』から十七年。『アルター能力者』を犯罪者及び、その予備軍として弾圧する
システムの完成により、連経済特別区域は漸く国内外にその地位を認められることとなる。
しかし人間は本来、争う生き物であり、平穏を維持しようとする力が強いほど、そこに生じ
る歪みは大きくなり、時にそれは取り返しのつかないものとなる。
前述したアルター能力者による犯罪の映像が、全国のお茶の間を震撼させた翌日、その『ロ
ストグラウンド』に『再隆起現象』が発生する。
中心部ではマグニチュード八・五を記録したとされるこの現象により、周辺の沿岸部も影響
を受ける。が、その規模は局地的なものであり、人的被害の少なかったことから、さほど大き
く報道されてはいない。
新たに隆起した山脈に遮られ、状況の把握できない『荒野』側はともかく、『市街』の損害
は軽微であり、人々が平静を取り戻すのにそれほどの時は要さなかった。
しかし八ヶ月後、この『市街』は崩壊する。
始まりは市街全域に発令された避難勧告だったという。突然の知らせに慄く市民の、ある者
は空港へ急ぎ、ある者は家屋の中に身を潜めた。
それから起ったのは消滅だった。家、車、ビル、あらゆるものが分解し消滅した。そして、
市街の中心にある『HOLD』本部ビルが異形に変化し、暫くの後に瓦解した。
正直、この証言の信憑性はかなり疑わしい。『あらゆるものを分解させる力』など、現在の
科学をしても、存在し得るようには到底考えられないからだ。が、その事象がそのままの形で
発現したかどうかはともあれ、この『市街』がほぼ完全に崩壊した、という結果には変わりが
ない。のちに『学園都市』の気象衛星――どうして気象衛星が、という疑問は措くとして――
が撮影したとして公表された衛星写真が、それを確固たる事実としているからだ。
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