過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/19(土) 22:49:30.25 ID:+1PF7tUNo
 ――あのバカと肩を並べるなら、あの程度で驚いてちゃ話にならないんだろうな。きっと。

 目に入る機材を片っ端からショートさせつつ、研究所の最奥部を目指して走る。

 ――『ロストグラウンド』の『アルター使い』。苗字のない、カズマという名。嘘みたいな
力と、確固たる信念の持ち主。私が知っているのはそれだけ。何のためにこの街に来たのか、
どうして『妹』を助けたのか、アイツは何も言わなかったし、私もまだ訊いてない。たぶんそ
れは聞けば笑ってしまうような、呆れるほどシンプルなものなんだろう。だから訊くのは最後
でいい。笑うのは最後がいい。

 曲り角、はち合わせた研究員を電撃で殴り倒す。

 ――アイツは私の中にある何らかの『スイッチ』を入れた。身体中を光の速さで駆け巡った
確かな『覚悟』は、壊れかけの『意地』にアドレナリンを流し込み、迷いや後悔という名のブ
レーキを蹴り砕き、ストールしかけたエンジン内にナイトラス・オキサイドを噴射した。

 長い廊下、監視カメラをほとんど無意識でハッキングして駆け抜ける。

 ――その瞬間に私は帰還不能限界点を超えた。この街の闇を知り、闇に牙を剥き、そして闇
もまた私を知った。私は既に、どこから見ても立派な犯罪者だ。私を姉と慕い、誇りを持って
この街の治安を護る、あの子のいる部屋へ帰る資格を失ってしまった。本当のことを知った時、
彼女は幻滅するだろうか、私を悪のように憎むだろうか。

 電子ロックを立て続けに解錠し、コントロール・ルームとおぼしき部屋に侵入する。

 ――あの人の気持ちが、いまはよく解る。護りたいもの、取り戻したいものが大きいほど、
選べる手段は限られてしまう。罪のない能力者たちの意識を奪ってでも教え子を救おうとした
彼女と、こうして『実験』の施設を焼いて廻り、その損害を顧みない私に一体、どれほどの違
いがある。彼女は結果として誰も殺さずに報われたけど、それがどうしても必要だとしたら、
彼女は退いただろうか。私はその瞬間にどう思うだろうか。

 コンソールを叩き、最奥部へのルートを検索する。地下だ。

 ――私がDNAマップを提供しなかったとして、それでも奴らはやっただろう。髪の一本も
あればクローンの生産は可能だ。奴らには遵法にこだわる必要も、理念もない。自らのエゴを
科学で表現することに忙しいあいつらを、私は否定する。完膚なきまでに、一切の容赦もなく、
否定してやる。その行為が悪だというなら、私は悪で構わない。『正しさ』に反逆する愚かさ
を、醜さを、この身に纏って暴虐を振るおう。人たるの意味すら知らずに殺された妹たちの、
その姉の怒りというものを教えてやろう。

 警備員をなぎ倒しつつ地下への道を進む。能力の加減を忘れそうになる。

 ――だけどまだ早い。この時点で死者を出すのは、妹たちの解放と安堵を得るための障害に
なる可能性がある。私の存在と目的を悟られるのは仕方ないが、奴らに『また造ればいい』と
考えさせてはいけない。あの子たちが人質として、盾として使われてはいけない。解放の瞬間
までは『計画』にあの子たちの命を守らせ、私はそれまでに『実験』と『製造ライン』を壊滅
させる。私は『限りなく絶望に近い運命』に反逆する。

 地下へ降りるハッチを電子ロックごと吹き飛ばし、梯子を無視して飛び下りる。

 ――『ぶち壊す』と『守らせる』。両方やらなきゃならないってのが、『お姉様』のつらい
ところだけど、私にも御坂家の長女としての意地がある。敵が誰だろうと、どれだけ分厚い壁
だろうと、やると決めたらやるんだ。『覚悟』とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くこと。
そう言ったあの主人公のように、私も――

 地下五〇メートルに位置する『学園都市』の闇。その昏い場所には先客が一人。

「アンタは……」
「久しぶりね、オリジナル」

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