過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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72:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/19(土) 22:50:46.19 ID:+1PF7tUNo
「車は帰らせたけど、構わねえよな?」
 車は無事だったようだ。話のわかるヤツだ。
「構わないわよ。あの子たちに怪我されても困るからね」
「事情は知らねえが、あんまり無理させんなよ」
「いつもだったら、とっくに終わらして帰ってるわ。アンタがおかしいのよ」
「お前も人のことは言えないんじゃないか?」
「ははっ、同類相求むってヤツかしら。コイツのおかげで、滅多にお目にかかれないけどね」
 相好を崩し、手をひらひらと振ってみせる。
「でも、悪くねえ。悪くねえよなあ」
 右拳を突き出した構えをとり、カズマは訊くまでもない問いを放つ。
「そう思うだろ? アンタも!」
 視線が同意を交し、同意が開戦の鐘を打ち鳴らす。

「麦野沈利、『原子崩し』の麦野沈利、アンタを殺す者の名よ。胸に刻んで逝きなさい!」
「カズマ、『シェルブリット』のカズマだ。コイツが気に入ったら刻んどきな!」
 麦野が受け、カズマが応える。物騒な笑みを浮かべ、二人、漢の太さを競う。

「一発でイクんじゃないよ!」
 麦野が先手をとり、『原子崩し』の砲撃をカズマに放つ。その、ぬるりとした白みを帯びた
極太の奔流は、光でありながら圧倒的な質量を持ち、一直線に迸る。
「うっ、ぐ……は」
 射線上の全てを崩壊させ、虚ろな穴と化す光線を受けて、しかしカズマは立ち続ける。
「見込んだ通りの逞しさだね。これなら愉しめそうだ」
 唇をちろりと舐め、麦野は視線に熱を込める。極上の甘味を前にした女のように。
「へっ、俺のコイツは特別製よ。鍛え方が違うから……な」
 減らず口を叩くカズマ。しかし自慢の拳からは、ぬめりとした赤い液体が滴っている。光線
の威力を相殺し切れずに装甲の半分近くが砕け、あられもない姿を晒している。
「さあ、もっと感じさせな!」
 これまで誰も堪えられなかった一撃を凌がれても、麦野に動揺はない。寧ろその逆だ。彼女
の中の何らかのスイッチがめきりと音を立てて入り、昂りが全身を駆け巡る。
「お楽しみは……これからだぜ」
 男の意地を猛らせ、カズマは新たな輝きを身に纏う。ドスの効いた笑みを返しつつ、突き立
てた右腕を左手で叩くと、中指を立てる代わりに甲のシャッターを開放した。

 あらゆるモノを貫く白い円柱と、あらゆるモノを跳ね除ける金色の旋風が、向かい合う二人
の間で衝突する。めりめりと強引に突き抜けようとする白い極太を、黄金の百裂張り手が押し
包み押し返し嬲る。刹那に繰り広げられる力と力の攻防、男と女の根比べ。そして均衡は金色
に傾く。白い暴れん棒は先端から拡散し、乱反射した白い飛沫が一面に広がった。

「っと。ヤるねえ、アンタ。痺れちまいそうだよ」
 跳ね返った白い電子を、掌に広げた光輪の盾で打ち消して、麦野が悦びの声を弾ませる。
「こっちもだ。このヒリつく感じが堪らねえ」
 白い流矢が抉った小さな穴をアルターで修復して、カズマが同感を返す。

「さてと。一本だと弾かれるってのが判ったところで……」
 ブン、ブン、ブン、ブン、と麦野の周囲に四つ、球状のビットが現れる。
「四本ならどうよ!」
 轟! と斉射される四本の白い悪魔。四分の一が四本、ではない。単純に四倍なのだ。確か
に、常であれば同時発射数に応じて威力は減じるのだが、いまの麦野は強敵を前にした歓びに
身悶えし、渾身を奮っている。いやさ四倍をすら超えているかも知れない。五倍以上のエネル
ギーゲインがあるかも知れない。それほどなのだ。
「うおッ!」
 咄嗟に金色の竜巻を放つが、四本の射角には対応が間に合わない。カズマの黄金の隙間から、
ずぶりずぶりと白い巨砲が差し込まれる。迫る圧倒的破壊力っ……! 危機……!
「……チッ、避けるってのは好みじゃねえがッ」
 カズマの背から生える尻尾が床を叩き、間一髪、四本の白い脅威は虚空を穿つ。
「ハッ! やっぱ四本ともなりゃ避けちまうのかい? 格好いいところを見せて欲しかったん
だけどなぁ」
 叱咤に続いて連続斉射される四本の白い闇が、天井を、壁を、柱を蹴って麦野を目指すカズ
マを掠め、背後に大穴を掘る。
「そりゃ悪かったな。すまねえ、許せ」
「まあいいさ。アンタが避けるってんなら、まずはそいつを――」
 麦野が胸の谷間からトランプ大のカードの束を抜き出し、一枚を指で弾いて飛ばす。
「撃ち落とすッ!」
 そして宙を舞うカードに白い閃光を撃ち込む。途端、模様に見えた四十二個の三角形が弾け、
閃光を拡散させる。空中を疾走るカズマを四十二の白き流星が襲う。
「ぐあッ!」
 反射的にガードするも、四十二分割されたとはいえ、十分な貫通力を残した流星群の勢いを
受け止められず、墜落し転げるカズマ。
「『拡散支援半導体』ってヤツよ。この『アイテム』には最新の技術が投下されてるのさ」
「隙も死角もなし、か。やっぱお前、面白いぜ」
 床に拳をくれた反動で立ち上がると、カズマは構えと共に無尽蔵のアルターを纏い、無限の
気合いを滾らせる。

「これでも折れないなんて、堪らないわ」
「言っただろ。鍛え方が違うって」
「こうなったら、最後まで突き合って貰うからね」
「最後に立ってるのは俺、だと思うがな」
「どうかしら? 私はそう簡単にヤられないわよ!」


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