過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/24(木) 05:29:11.49 ID:Ml1iA1Uxo
例によって屋上の柵を分解しているカズマを諦め顔で眺めるカエル医者に、布束が訊いた。
「まさか、あの、本当に……?」
「うん。君はまだ『信じなくていい』よ。それが正しいんだからね?」
知ってしまった者には決定事項だが、知る前の者には絶対に信じられない、そんな宇宙ショー
が開幕しようとしている。
「……最新鋭の衛星が二基。この一日で『学園都市』の損失は一〇〇〇億円を超える、か」
カエル顔の醒めた声音に、ゾクリ、と布束の背筋にも冷たいものが疾走る。
「準備出来たぞ、おっさん!」
そのドヤ顔を見て、いっそのこと『近づいたら撃つ』とかいう機能が衛星についていれば、
という不穏な願望を抱いてしまうが、まあ無理かと却下する。機能がではなく、仮にあったと
しても『その程度』では無理なのだ、この男には。
「ええと、そうだな。あの辺りを五分後に通過するよ。今度のは低軌道の中でも低い方だから、
三五〇キロ上空だね?」
あらぬ方角を伝えるのも却下だ。間違って他国の軍事衛星を墜とされては堪らない。この街
の衛星ならまだマシだ。どうせ『学園都市総括理事長』がハニワ顔になるだけだ。
「五分か。待たなくていいのはありがてえ、あの辺はちょっと寒いからな」
「『ちょっと寒い』……ですって……?」
マイナス二七〇度が『ちょっと寒い』か……。生身で大気圏を突破する人間に相応しい感想
だよ。帰りだって、再突入回廊とバナナの区別もつかないこの男は、どうせまっすぐ落ちてく
るんだ。摩擦熱は少なくとも一〇〇〇〇度は超えるだろう。それも『ちょっと熱い』のだろう?
「そんじゃ、ちょっと待ってな」
ああ、同じだ。またあの金色だ。僕は何という男と出逢ってしまったのだろう。不幸だ。
そして、カズマが何度目かの宇宙遠征へ出かけた数分後、もう一人の悪夢が帰還する。
「ただいま! 私の妹たちの容態はどう?」
きらきら光る汗を跳ね散らしつつ、御坂美琴が満面の笑みでカズマと同じ質問をした。
× × ×
「あ! 流れ星!」
「……もういいから。君にそういうものを期待する人はもう、どこにもいないからね?」
「そ、そんなことないもん! 私にだってきっとどこかに――」
リプレイのように地上に突き刺さる流星をあたり前のように眺めつつ、地獄のテロリストと
地獄帰りの医者が乙女の何たるかについて議論している。
布束は一人、あり得ない情景と常識の狭間で苦悩する。
(……科学的、合理的に説明のつかない『能力』。知識と概念が現実に追いつかない。もはや
見たままを受け入れるしかないのか。だが、しかし……)
『能力』を上回る才能と努力で現在に辿り着いた布束にしてみれば、これを理解できないと
いうのは敗北に等しいのだ。
(まあいい、いまは容れよう。信じようが信じまいが、これは事実だ。時が来るまでは観察に
徹しよう。幸い、この連中の企みはまだ始まったばかりだ)
馴れ親しんだ無愛想を被り直し、彼女は電撃中学生と看護婦マニアの論争に参戦した。
× × ×
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