過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/27(日) 21:27:25.18 ID:G14G1ccfo
 八月十六日 午前九時三〇分 カエル顔の病院

「やってなかったぞ」
 寝起き一発目の挨拶がコレだと、さすがに美琴も反応が鈍る。
「……ふぇ?」
 ソファーの上で強張った身体を伸ばし、美琴は隣に眠る妹の無事を確かめる。カーテン越し
の陽光が照らす妹の頬に、健全な赤みが差しているのを認めて、ほっと息を吐いた。
 美琴が安堵に到るのを待って、カズマは報告を続ける。
「『実験』だよ。しばらく待ってみたが誰も来なかった」
 『実験』の一言に、中途まで進んでいた覚醒を即座に完了させ、美琴は戦場に復帰する。
「そう……。これは朗報だと思っていいのよね?」
「どうだかな。コイツが書き換えられただけ、かも知れねえ」
 ポケットから雑に畳まれた紙を取り出して、広げる。美琴が『書庫』から引き出した『実験』
のスケジュール表だ。ちなみに、漢字には布束砥信の手によって全てルビが振られ、裏面には
目的地までの地図が大書されている。
「可能性は、あるわね。一刻も早く最新の情報を入手しないと」
 バッ、とタオルケットをはね除けて立ち上がった美琴の目が、ある一点で止まり、そのまま
硬直する。ソファーの背もたれの上、几帳面に畳まれた半袖の白いブラウス、袖なしのサマー
セーター、灰色のプリーツスカート、白い靴下、そして体操服の――
「……!?」
 着衣のままで寝るという発想のない育ちのよさが、少女に悲劇をもたらした。
「きゃ……ァ……ャ……ッ……!」

 病室に無言の絶叫と迅雷が轟いた。

 モゴモガと喚き続ける美琴の口を封じて、落ち着けよく見ろ妹を起こすなと、宥めるカズマ
だが、その所作は火に油を注ぎ続けるに等しい。
 半裸の女子中学生の口を強引に塞ぐ凶悪なチンピラ、どこから見ても最悪の構図である。
「あちちちっ」
 無意識の放電がカズマを灼く。これが他の誰かだったら息の根が止まっていただろう。その
点で美琴は幸運だった。もちろん、それで帳消しになるような不幸ではないが。

 背を向けるカズマを射殺さんばかりに睨み、慌ただしい身仕度を済ませると美琴は言った。
「見たわね」
 語尾に疑問符はついていないし、その必要もない。スカートが風に吹かれたとか、保健室の
ドアを開けたら着替え中だったとか、そんなチャチなものでは断じてないのだ。
「ああ……」
「……ごめんなさいは?」
「……」
「ごめんなさいも言えないのかっ!」
「……ん、ああ、そうだな。すまねえ」
 どこか遠くを見て、遠い誰かに赦しを乞うていたカズマが我に返り、美琴に謝罪する。
「今度やったら殺すからね!」
 と、鼻息も荒く矛を収める美琴。そもそもカズマには一点の非もないのだが、二人はそれを
それぞれの理由によって無視した。

               ×    ×    ×

『……夢を、夢を見ていました。
 夢の中のあの人が、裸の女の人に襲いかかっています。
 女の人は何かを叫ぼうとしていますが、あの人の手がそれを許しません。
 あの人は何をしようとしているのでしょう?
 私は激しい怒りを押さえ切れなくなって、大声で叫びました……』

               ×    ×    ×


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