過去ログ - 上条「精神感応性物質変換能力?」
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88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage saga]
2011/03/27(日) 21:28:16.33 ID:G14G1ccfo
「やあ、おはよう。よく眠れたかい?」
「おはよう、おかげさまで。――目覚めは最悪だったけどね」
膨れっ面の美琴に次いでカズマがカエル顔の医者の診察室へ入り、焦げ臭さを漂わせる。
「ん? おっさん、あのねえちゃんはどうした?」
「布束君かい? 彼女なら『学習装置』のシステムを構築してるよ?」
「てす何とかを何してるって?」
「アンタが昨日担いでいったヤツよ。アレを使えるようにしている、そうでしょ?」
「そうだね。あれは本体だけがあっても意味はないからね?」
「面倒なもんだな、機械ってヤツは」
「アンタの頭ん中みたいに単純には出来てないのよ!」
「そう噛みつくなって」
「朝から元気がいいね。何かいいことでもあったのかい?」
「うるさいわね!」
「いいことなんて何もなかったよ、な?」
「アンタは否定するな!」
「えーと。そんじゃ、ありがとう?」
「礼も言うなァッ!」
沸騰する美琴を残して退散するカズマの背に、罵声と雷撃が刺さった。
× × ×
『学習装置』の周りに計器と工具を取り散らかし、布束砥信は忙しく働いている。
彼女の専攻は生物学的精神医学であり、本来こういった作業は専門外なのだが、それを苦に
している様子は見られない。
「よう、捗ってるかい?」
「ええ。昼にはこの子を起こせそうよ」
待機状態のまま接続を切って本体を移動させたので、システムを再起動して覚醒の指示を送
るまでは起こしてはならないと、噛んで含めてこの男に伝えた昨夜の苦労を思い出し、布束の
繊細な神経が疼痛を訴える。
「そりゃよかった。あのビリビリも喜ぶだろう」
「……あなたねえ、人にはそれぞれ名前というものがあるのよ?」
作業の手を止めず、布束は教育を試みる。
「苦手なんだよ、覚えるのが」
「私の名前は?」
「えーと、何だっけか」
「ぬ・の・た・ば・し・の・ぶ、よ。胸に刻んでおきなさい」
「自信ねえな」
軽く却下するカズマを鼻先で笑い、布束は攻勢に転じる。
「……由詑かなみ。彼女の名前はしっかりと刻まれているようね」
「ッ! 何でそれを!?」
「Because、私にはあなたの心が読めるのよ」
「それがお前の『能力』ってヤツか」
「そういうこと。この『能力』でブッ殺されたくなかったら、忘れないよう努力しなさい」
「ハッ、覚えるか死ぬかってか。そいつは楽しい賭だ」
「明日また訊くからね」
「あいよ!」
何かいいことでもあったかのように、カズマは足取りも軽く去っていく。
「死ぬ気はないけど覚える自信もない、か。それもまた面白い」
声に出さず、布束は笑う。それが笑顔だと気づく者は少ないだろうが、ほんの少しだけ下がっ
た目尻と、微かに艶を帯びた瞳には、確かに彼女の感情が現れていた。
× × ×
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