80:nubewo ◆sQkYhVdKvM[saga]
2011/06/01(水) 03:34:39.28 ID:7hpdMmcko
一時間くらいだろうか、ふと上条が目を覚ますと、室内は日が落ちたせいですっかり暗くなっていた。
そして姫神のベッドの上で寝ていたことを思い出す。
ベッドの持ち主はまだ目覚めていないらしく、静かな寝息を立てていた。
起こさないよう、触れたりはせずにそっとその寝顔を眺める。
所有しているという感覚は女性に対してきっと失礼なのだろうが、
しかし上条が隣で眠る姫神の顔を見て覚えるのは、姫神が自分のものなのだと思う、その満足感なのだった。
自分がもう一眠りしてしまうと本格的に遅くなりそうだ。寝顔に満足したら、起こしたほうがいいだろう。
枕もとの時計を見る。あまり遅くなっては、インデックスが気を揉むだろうから。
思えば、この数日は怒涛の展開だった。
まあこの夏からこちら、上条の人生はジェットコースターのように猛スピードであれこれ展開はしているのだが、
色恋沙汰の面で、上条の隣にいてくれる女の子について考えれば、人生でも初なくらいこの数日は劇的だった。
ひょんなきっかけから姫神と放課後を過ごすことになって、どんどんと距離を近づけて。
逆に美琴との距離が開いてしまった。インデックスとも、関係の意味合いを変えてしまった。
吹寄とももう、ただの友達としては遊べないかもしれないし、彼女の姫神がいれば五和だって居心地が悪いかもしれない。
そんな風に、少なくない人と疎遠になった。
代わりに、こんなに近くに、姫神を抱きしめられるようになった。
「ん……」
上条の身じろぎに反応したのだろう、浅い眠りから姫神が浮かび上がってきた。
薄く目を開けて上条を認識して、姫神が眠たげに可愛い笑顔を浮かべた。
「おはよう。当麻君……」
「おう。まあ時間的におはようは変だけどな」
「うん。夜だもんね」
「寝顔、可愛かった」
「もう……いいもん。昨日の当麻君の寝顔も可愛かったから」
そんな仕返しを喰らって、上条は姫神の唇を唇でふさいだ。
「ん。ふ。あ」
眠気を引きずったままの、緩慢なキス。
今このタイミングには、そういうのが合っていた。
「秋沙、好きだ」
「うん。嬉しいよ」
「結婚してくれ」
「えっ? ……うん。いいよ」
本気で言うにはまだ上条も姫神も若い。
だから冗談みたいなものではあったけれど、だけどなんだか照れくさくて、嬉しい。
上条の心音を聞くように、姫神が胸に頭を預けてきた。
「当麻君があったかいから。このまま寝てもいいかなって思っちゃう」
「んー。でも腹減ってこないか?」
「もっと雰囲気を大事にしたこと言ってくれないの?」
「ごめん」
顔を見合わせて、クスクスと笑う。
「今日も一緒に晩飯食べないか?」
「うん。あの子もお腹を空かせてるだろうし。早く行ってあげないと」
「だな」
自然な風に姫神がインデックスの名を出してくれたのをありがたく思いつつ、上条は名残惜しいベッドから身を起こした。
そして姫神を抱きかかえて起こしてやる。
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