過去ログ - 美琴「極光の海に消えたあいつを追って」
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299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[sage saga]
2011/04/13(水) 02:09:01.33 ID:9KzOTW+Oo

「……なぁ、教えてくれよ。
 俺はどこの誰で、何のために、何をしてここにいるんだよ。
 あの子たちの名前も、顔も、声も、どうやって出会ったのか、どんな関係だったのかすら全く覚えてない。
 そんな俺に、何が出来る?
 俺は、あの子たちを悲しませないために、どうすれば良かったんだよ……!」

上条はかつて一度も仲間たちに見せなかった顔を見せる。
苦しむような、哀しむような、哭くような表情は、ステイルを言葉に詰まらせるには十分過ぎた。
ステイルは右腕を離し、それに伴い上条も彼の右腕を掴んでいた手を離す。

「…………何日、何カ月、たとえ何年かかってもいい。
 あの子たちのことを思い出せ。それが今の君に出来ることだ」

そう絞り出すのが、精一杯だった。


逃げるように上条の病室を後にしたステイルは、適当なベンチに座り込み頭を抱える。
あんな表情をする上条当麻は初めて見た。

インデックスを運命の因果から解き放った時とも、ベツレヘムの星で最後に話した時とも異なる、初めて見る弱った上条の姿。
どうにも以前の上条の姿とは重ならず、それが却って彼の変化を実感させる。

上条当麻は聖人君子でも、最強無敵のヒーローでもない。
ローマ正教、神の右席、そして大天使。
例えどんな強敵を打倒してきたとしても、根っこの部分ではどこにでもいるはずのただの高校生にすぎない。
自分たちは、それを忘れてはいなかったか?
彼ならなんとかしてくれると、全てを押しつけてはいなかったか?


     『…………なぁ、教えてくれよ……!』


耳に焼きついた、すがるような上条の言葉に、ステイル=マグヌスは唇を噛みしめる。

鉄錆の味が、口の中に広がった。



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