40: ◆le/tHonREI[saga]
2011/03/18(金) 21:40:58.57 ID:FC372KGUo
【離れてろ。テメェは俺が送る信号を変換してくれてりゃいい。俺を想ってくれるなら、尚更だ】
初春はその言葉の裏側にある意味を察する。
自分が演算処理の手を抜いた瞬間に、垣根帝督が殺されてしまう可能性があるということだ。
争いを止めたくても、止められない。自分が垣根を救うための最大の努力は、彼が放つ信号を嘘偽りなく“変換”することだ。
たとえそれが地獄への後押しになるとしても、“垣根帝督を救うためには彼を地獄へと送らなければならない”。
二人の戦闘を積極的に増進することしか、選択肢は残されていない。
この心理状況は、あの時と似ていた。
戦争が始まる前に、彼を救おうとしたときに感じた、無力感。
(私は……、何なんだ。情報の処理能力に優れていても、何も救えない。彼の心の闇を取り除くことなんてできていない)
(言葉で何を変えられるんだ。この街に潜んでいるものを、形のないものでどうやって取り除けっていうんだ)
(こんなに、好きなのに。こんなに想っているのに。何もできないの……? 何も、してあげられないの……?)
(何がジャッジメントなんだろう。私は……、何て無力なんだろう……)
【花言葉、覚えているか】
「え?」
垣根はもうこちらを見てはいなかった。
【ナンバーワンとかオンリーワンとか、正直なところどうなんだろうな。俺は確かに序列自体にはもう執着がないのかもしれねえ】
「……、……」
【つないでくれ。タイムリミットだ】
そして、
初春は、
うつむいたまま、静かにイヤホン型デバイスを耳に装着した。
一体感が二人を包んで、調和する。
435Res/201.24 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。